社内データをAIにつなぐだけでなく、言葉の意味、判断条件、承認の境界をそろえるための基盤です。
AIに顧客一覧や契約書を渡しても、部署によって「契約中」「対応完了」「重要顧客」の意味が違えば、判断はそろいません。必要なのは資料の量だけでなく、組織として何を根拠に判断するかを定義することです。
Sakana AIは2026年10月23日、AIエージェントの構築・実行・運用を支えるSakana Aquariumを発表しました。中心となるのは、情報の意味と関係を整理するオントロジー、実行するエージェント、人の承認と記録を扱う統制です。単なる社内検索との違いを見ていきます。
この記事でわかること
- 役割:Ontology、Managed Agents、Governanceがそれぞれ担うこと。
- 業務例:同じ言葉の意味がずれると、AIの判断に何が起きるか。
- 準備:導入相談の前に整理したいデータ、判断条件、承認、確認結果。
オントロジーは、資料を置く場所ではなく「意味と関係」の定義
AquariumのOntologyは、組織が使う知識、ルール、データを意味や相互の関係とともに整理する仕組みです。たとえば「顧客」「契約」「問い合わせ」という情報を、それぞれ独立した表のまま見るのではなく、どの顧客のどの契約に関する問い合わせかという関係で扱います。
同じ「完了」でも、何の完了かを分ける
次は仕組みを理解するための架空の例です。営業の表で「完了」が契約締結を意味し、総務の表では請求書発送、サポートでは問い合わせへの初回返信を意味していたら、AIに「完了した案件を集めて」と頼んでも対象は曖昧になります。
ここで必要なのは、文章をもっと渡すことだけではありません。何の状態を表す言葉か、どのデータを正とするか、いつ更新されたかを決めることです。Ontologyは、こうした判断の土台を共通化するために位置付けられています。
接続と意味付けは同じ作業ではない
公式発表では、既存のテーブルや文書を別の保存先へ移し替えずにつなぐ構成が説明されています。ただし、つながることと、部署間の用語や業務ルールが自動的に統一されることは別です。
対象データへの接続や同期の方法は、導入対象に応じて設計する必要があります。「社内のどんなSaaSでも追加作業なしで常に最新になる」といった意味には読み替えないでください。
判断の土台、実行、統制を分けて考える

| 仕組み | 役割 | 導入側で明確にしたいこと |
|---|---|---|
| Ontology | 知識・ルール・データの意味と関係をそろえる | 用語の定義、参照元、データ同士の関係 |
| Managed Agents | 情報参照、AI判断、関数実行、人の承認を含む仕事を動かす | 処理順序、入力と成果物、例外時の扱い |
| Governance | アクセス権、実行前承認、判断根拠と結果の記録を管理する | 誰が見られるか、誰が承認するか、後から何を確認するか |
この三つを分けると、AIに任せる仕事を具体化しやすくなります。問い合わせの対応案を作れることと、その案を顧客へ送ってよいことは別の条件です。判断できる情報がそろったからといって、実行権限まで自動的に与える必要はありません。
記録は、トラブル時だけでなく改善にも使う
公式説明では、参照した情報から判断、承認、実行結果までを記録し、速度や精度、モデルの利用状況も把握するとしています。
業務の側から見ると、誤りがあったときに「古いデータを読んだのか」「判断条件が曖昧だったのか」「承認後の実行で失敗したのか」を分けられることが重要です。すべてをAIの回答精度の問題として扱わず、どの工程を直すか判断する材料になります。
導入相談の前に、一つの業務を分解する
公式発表は、Sakana AIのFDEが利用企業と構築・検証を重ねる導入方法を案内しています。検討段階では、社内全体を一度にAI化する構想より、判断基準と結果を確かめられる一つの仕事を整理すると、相談内容が具体的になります。
「問い合わせの対応案づくり」を例に考える
以下はAquariumで実装済みの機能一覧ではなく、導入する業務を整理する例です。
- 判断の対象を決める:問い合わせを分類し、担当者へ対応案を渡す。顧客への自動送信は含めない。
- 参照元を決める:契約条件、製品情報、対応履歴のうち、正式な情報源と更新担当を明確にする。
- 言葉と関係を定義する:契約中の範囲、顧客と契約の結び付き、例外対応の条件をそろえる。
- 人へ戻す条件を決める:返金や契約変更など、担当者の確認が必要な判断を分ける。
- 結果を評価する:分類と根拠が合っているか、必要な確認を飛ばしていないかを、過去事例で確かめる。
この整理で「正式な契約条件がどこにあるか分からない」と判明したら、AIの設定より先に参照元の管理を直す必要があります。未定義の業務ルールをAIに推測させないことが、導入準備の重要な部分です。
別のエージェントへ広げる前に、共通定義を点検する
Aquariumは、整備したデータやOntologyを別のエージェントでも再利用する考え方を採っています。共通基盤が整えば、同じ用語や接続を仕事ごとに作り直す負担を減らせます。
ただし、誤った定義まで共通化すると影響も広がります。部署によって例外がある場合やルールが変わる場合に、誰が定義を更新し、どの業務へ影響するかを確認する運用も必要です。
現場のメモから担当者や承認工程を整理する方法は、業務フローを見える化する手順も参考になります。AIが補った工程を事実と混同せず、現場担当者の確認を通すことが前提です。
実務上の注意
今回の公式発表は導入・活用相談を案内するもので、一般利用者がその場で登録して使い始められるセルフサービスや、誰にでも適用される公開料金を示したものではありません。接続先、同期、権限、運用条件は個別に確認してください。
また、AIがエージェント構築そのものを支援する仕組みや、組織の変化へ継続対応する機能は開発中の説明を含みます。将来の方向性を、現時点ですべて利用できる機能と混同しないことが大切です。
まとめ
Aquariumの発表が示すのは、AIの賢さだけでなく、社内の情報の意味、判断のルール、人の承認をそろえる基盤の重要性です。導入を検討するなら、まず一つの仕事について参照元と判断条件、実行してよい範囲を明文化するところから始めると、必要な構成を見極めやすくなります。
よくある質問
オントロジーは社内文書を検索する仕組みと同じですか?
資料を探すだけでなく、データや知識の意味、関係、判断ルールを体系化する役割です。資料の場所が分かっても用語の意味が部署ごとに違う場合、その定義をそろえる必要があります。
データを接続すればAIがすべて自動判断してよいのですか?
いいえ。公式の構成にもアクセス権限や実行前の承認が含まれます。情報参照、判断、実行、人の承認は別々に設計します。
すぐに申し込める料金プランは公開されていますか?
今回確認した公式発表は個別の導入・活用相談を案内しています。一般向けの公開料金や、全社に共通するセルフサービス開始を前提にせず、対象業務と条件を問い合わせる必要があります。
出典・参考情報
運営元について
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