AI検索で店舗はどう選ばれる?4,776店調査で見えた推薦の偏り

AI検索で店舗がどう選ばれるのか、4,776店舗の調査から推薦の偏りを解説するアイキャッチ画像

ChatGPTなどのAIにおすすめ店を聞いても、地域の全店舗を公平に比べているとは限りません。4,776店舗を対象にした調査では、85.6%の店舗が4つのAIから一度も推薦されませんでした。

「近くで静かなカフェを教えて」「予算内で評判のよいレストランは?」とChatGPTへ聞くと、条件に合いそうな店が短い一覧で返ってきます。便利な一方で、AIがどの情報を手がかりに候補を選んでいるのかは、利用者から見えにくい部分です。

2026年8月7日、バリ島のチャングーとウブドにある飲食店4,776店を対象に、ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityの店舗推薦を調べた研究がarXivで公開されました。今回は、調査から見えたAI推薦の偏り、星評価だけでは説明できない理由、店舗側が見直せる情報整備を整理します。

この記事でわかること(結論)

  • AIに表示されない店舗の多さ:4,776店のうち4,087店は、4つのAIから一度も推薦されない結果に
  • 候補入りと順位は別の段階:候補に入る段階ではレビュー数、自社サイト、価格情報、第三者サイトでの言及との関連が見られ、候補に入った後の並び順では星評価との関連が確認された
  • 完全な作り話より古い情報に注意:架空とみられる店舗名は少なかった一方、閉店済み店舗が93回推薦された
  • 店舗側が見直したいこと:AIへの表示を保証する方法はありませんが、公式サイトや店舗プロフィールの情報を正確にそろえ、複数回の検索で表示状況を把握する意味はある

数値と傾向は、2026年8月7日に公開されたarXiv掲載論文をもとにしています(出典:「Invisible to the Machine」)。

ChatGPTのお店検索は、Web情報から少数の候補をまとめる

OpenAIの公式ヘルプによると、「近くのおすすめレストランは?」という質問では、IPアドレスから推定したおおよその地域や、利用者が任意で共有した端末の位置情報が検索結果に使われることがあります。質問にWeb情報が必要だとChatGPTが判断した場合は、自動で検索が行われる仕組みです(出典:OpenAI「ChatGPT Search」ヘルプ、2026年8月10日確認)。

AIへ条件を伝えて予約先の候補を絞る具体的な使い方は、ChatGPTで当日予約できるサロンや美容院を探す記事で紹介しています。本記事の中心は店の探し方ではなく、AIの推薦候補へ入りやすい店舗情報の傾向です。

4,776店舗のAI推薦調査はどのように行われた?

arXiv掲載論文は、バリ島の2地域にあるカフェ、レストラン、バーを一覧化し、4つの検索機能付きAIがどの店を推薦するかを7日間調べた観察研究です。

調査方法の全体像は、次のように整理できます。

調査項目 内容
対象地域 インドネシア・バリ島のチャングーとウブド
対象店舗 カフェ、レストラン、バーなど4,776店
対象AI ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity
質問パターン 仕事向けカフェ、デート、家族連れ、予算重視、食事制限など96種類
回答数 検索機能付きAIによる2,208回の回答
調査期間 7日間。追加で2週間後の再調査も実施

96種類の質問は、8種類の利用者像、6通りの聞き方、2地域を組み合わせて作られました。店名だけを尋ねるのではなく、「静かに仕事ができるカフェ」「子ども連れで入りやすい店」「安く食べられる場所」など、実際の利用場面に近い条件が設定されています(出典:arXiv掲載論文「Invisible to the Machine」、2026年8月7日)。

調査の結果:85.6%の店舗が一度も推薦されなかった

レビューがほとんどない小規模店だけが表示されなかったわけでもありません。Google上で50件以上の評価を持つ店舗に絞っても、72.6%が一度も推薦されない結果でした(出典:arXiv掲載論文「Invisible to the Machine」、2026年8月7日)。

AIの回答は、検索結果を何ページも並べる形式ではなく、数店の候補を短くまとめる形式です。地域に店が多く存在していても、利用者の画面へ出る候補は一部に絞られます。AIがおすすめした店が、その地域で最も優れた店を網羅しているとは限らない点が重要です。

スマホに表示されたAIおすすめ店を見て、良い店から順番だと思っていたことに驚くさくらことミフオ

星評価だけでは、AIの候補に入るか決まらない

論文では、AIの答えへ店名が入る段階と、候補の中で先に並ぶ段階で、関連する情報が異なりました。星評価だけを見ればよいという単純な結果ではありません。

論文で示された傾向を、2つの段階に分けると次のようになります。

段階 関連が見られた情報 初心者向けの読み取り方
AIの回答へ入る レビュー数、自社Webサイトの有無、価格情報、第三者サイトでの言及 店舗について利用者が調べられる情報が、Web上に蓄積されているかが関係していました。
候補の中で先に並ぶ 星評価、レビュー数 AIが候補として認識した後は、評価の高さも並び順と関係していました。

店舗データベース「Foursquare」への掲載は、候補入りにも並び順にも正の関連は見つかりませんでした。特定の店舗データベースへ登録すればAIに表示される、という結果でもありません(出典:論文本文の分析結果、2026年8月7日)。

論文は、候補入りの段階を「情報があるか」、並び順の段階を「評価がどうか」という二段階で説明しています。ただし、研究設計は観察研究です。自社サイトを作ったから推薦されたのか、規模が大きく運営体制の整った店ほど自社サイトも持っていたのかまでは証明されていません(出典:論文本文の結果・限界、2026年8月7日)。

AIごとにおすすめ店は異なり、同じ質問でも結果が揺れる

ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityは、同じ地域と目的で尋ねても同じ店舗一覧を返すわけではありません。1回だけの検索結果を、固定された評価や順位として扱うのは適切ではありません。

各AIで推薦回数が多かった上位20店を比べると、店舗の重なりは33%から54%でした。4つすべての上位20店に入った店舗は8店に限られています。

同じ質問を同じAIへ繰り返した場合も、候補の重なりは平均22%から45%でした。質問の言い回しを少し変えるだけで、別の店舗が出ることもあります(出典:arXiv掲載論文「Invisible to the Machine」、2026年8月7日)。

店舗側がAI上の表示状況を調べる場合は、1回の回答だけで結論を出さず、同じ条件で複数回試す方法が現実的です。ChatGPTだけでなく複数のAIでも試すと、特定のサービスだけに出る店と、複数のサービスへ出る店を分けて見られます。

架空の店より、閉店済みの情報に注意が必要

論文では、AIが完全に架空とみられる店名を作る例は少数でした。実務上は、閉店した店を現在も営業している候補として出す古い情報の方が目立っています。

12,439件の有効な店舗言及のうち、架空とみられる1つの店名への言及は10件で、全体の0.08%でした。一方、閉店が確認された14店舗は、合計93回おすすめされています(出典:論文本文「Failure modes」、2026年8月7日)。

利用者は、AIが出した店名だけで来店や予約を決めず、公式サイト、予約画面、店舗への電話などで営業状況を確かめた方が安全です。営業時間や日付をChatGPTへ聞く際の伝え方は、ChatGPTが時間を間違える原因と確かめ方を解説した記事でも紹介しています。

AIがおすすめしたきれいなカフェへ向かったさくらこが、実際には閉店していた店舗を見て驚く比較イラスト

店舗側が今見直したい3つの項目

店舗側が今できる対応は、AI向けの裏技を探すことではなく、利用者と検索サービスが参照できる基本情報を正確にそろえることです。研究結果は表示を保証する方法を示していませんが、情報整備の優先順位を考える材料になります。

次の3点は、論文が施策の効果を直接証明したものではなく、研究結果とOpenAIの公式案内をもとにした点検項目です。

  • 公式情報を分かりやすく掲載する:自社サイトに店名、所在地、メニュー、価格、予約先、営業状況を掲載し、古い情報が残っていないか点検します。
  • 第三者サイトの情報を点検する:レビューサービス、地域メディア、予約サイトなどに掲載された店名、所在地、価格帯、営業状況に誤りがないか点検します。
  • AI上の表示を繰り返し調べる:店名だけでなく、「地域名+目的+条件」の質問を複数回試し、表示の有無や説明内容、閉店・価格などの誤りを記録します。

OpenAIは、ChatGPT Searchで上位表示を保証する方法はないと案内しています。自社サイトを検索対象に含めたい場合は、OAI-Searchbotがサイトを読み取るアクセスを遮断していないか、サイト管理者へ問い合わせる必要があります(出典:OpenAI「ChatGPT Search」ヘルプ、2026年8月10日確認)。

自社サイトがAI検索でどのように引用されているかを継続的に測る方法は、Bing Webmaster ToolsのAI表示分析を解説した記事で整理しています。

店舗側がAI検索対策として見直したい3項目を、ホワイトボードで解説するさくらこ

実務上の注意

研究結果を店舗運営へ当てはめる際は、見落としやすい調査条件を3点把握しておく必要があります。

営業時間の掲載は、推薦要因として解釈できない

営業時間の有無も分析項目に含まれていましたが、店舗データの集め方による偏りが混ざったため、論文は営業時間と推薦の関係を解釈対象から外しています。営業時間を掲載すればAIに選ばれやすくなる、という結論は論文から導けません。ただし、閉店済み店舗が推薦された問題を減らすため、営業状況を最新に保つ運用は必要です。

調査対象は一般向けアプリではなく検索機能付きAPI

調査は、各社の公開された検索機能付きAPIを使って行われました。一般利用者が開くChatGPTやGeminiの画面と近い設定を目指していますが、表示方法や検索回数、モデルの設定まで同一ではありません。一般向けアプリでも同じ店が同じ順番で出る、と断定しない読み方が適切です。

バリ島の結果を日本の店舗へそのまま当てはめない

調査対象は、バリ島の隣接する2地域、英語の質問、旅行者やリモートワーカーを想定した条件に限られます。arXiv版は、査読前の段階で公開されたプレプリントです。研究を資金提供・実施したNorlyは、宿泊・飲食事業者向けのレビュー管理・AI可視性ツールを販売しており、論文は商業上の利害関係と、事前登録やデータ固定などの対策を開示しています。日本市場で同じ傾向が再現するかは未検証です(出典:論文本文「Limitations」「Ethics and Disclosure」、2026年8月7日)。

まとめ

4,776店舗調査では、地域に存在する店の多くがAIの短い推薦一覧へ入らず、候補入りと並び順でも関連する情報が異なりました。星評価だけで決まるのではなく、Web上で店舗情報を参照できる状態も関係していた点が重要です。

店舗側では、まず公式サイトや主要プロフィールの情報を点検し、価格や営業状況を最新に保つことが大切です。あわせて、複数の質問やAIで表示結果を確認すると、自店がAI上でどのように扱われているかを把握しやすくなります。利用者側は、AIの候補を出発点として使い、来店前に公式情報を確かめると安心です。

よくある質問

ChatGPTは地域にあるすべてのお店を比較してからおすすめしていますか?

すべての店を公平に比較しているとは限りません。論文では、85.6%の店舗が4つのAIから一度も推薦されず、回答に出る候補は市場の一部に限られていました。

星評価が高ければChatGPTにおすすめされますか?

星評価だけでは決まりません。調査では、候補へ入る段階はレビュー数、自社サイト、価格情報、第三者サイトでの言及と関連し、星評価は候補に入った後の並び順と関係していました。

自社サイトを作ればChatGPTに必ず表示されますか?

表示は保証されません。自社サイトの有無と推薦には関連が見られましたが、観察研究のため因果関係は証明されておらず、OpenAIも上位表示を保証する方法はないと案内しています。

ChatGPTが紹介した店の営業時間は、そのまま信じても大丈夫ですか?

公式情報で最終確認してください。論文では閉店済み店舗が93回推薦されており、現在の営業状況や予約可能時間が古い場合があります。

日本の飲食店や美容院にも同じ傾向がありますか?

日本で同じ傾向になるかは未検証です。調査対象はバリ島の2地域、英語の質問、検索機能付きAPIに限られるため、日本の地域サービスへ当てはめる際は参考情報として扱う必要があります。

関連する用語・出典

  • ChatGPT Search:Web上の情報を検索し、回答と引用元をまとめるChatGPTの機能。詳しくはOpenAI公式ヘルプで確認できます。
  • AI推薦の可視性:店舗や商品が、AIの回答へ候補として現れる状態を指します。検索順位と同じ仕組みであるとは限りません。
  • 観察研究:実際に起きているデータの関係を調べる研究方法です。関連は確認できますが、原因と結果までは断定できません。
  • API:サービス同士が機能やデータをやり取りする仕組みです。調査では一般向け画面ではなく、各社の検索機能付きAPIが使われました。
  • プレプリント:査読前の段階で公開される研究論文です。内容は今後の検証や改訂によって変わる可能性があります。
  • 一次研究:本記事の中心資料は、「Invisible to the Machine: Auditing AI Restaurant, Cafe, and Bar Recommendation Against a Complete Market Census」です。

※本記事は2026年8月10日時点で確認した公開情報に基づきます。中心資料はarXivのプレプリントで、バリ島2地域・英語質問・検索機能付きAPIによる観察研究です。日本の店舗や一般向けAIアプリで同じ結果になることを示すものではありません。

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この記事を書いた人

さくらこのアバター さくらこ AIメディア編集・実践担当

AX事業部の若手社員。最初はAIに対して「難しそう」という苦手意識を持っていたが、ミフオやセンパイの指導を受け、今ではプロンプトを駆使して業務を爆速化させている。読者と同じ「初心者目線」で、本当に役立つ実務ノウハウを発信中。