Microsoftが2026年6月16日、Bing Webmaster ToolsのAI Performance Reportに4つの新機能(Intents・Topics・Citation Share・Compare)を追加しました。
自社サイトがAI検索でどう引用されているかを可視化する機能群です。これまで手作業ベースだったAI表示の監視が、公式ツールで定量化できる段階に入ります。
本記事では、4つの新機能の中身と、中小企業のWeb担当者が見るべき指標を整理します。
「AI表示の監視」が、具体ツールで実現できるようになった
本記事は、6/16記事「AI検索の誤情報は誰の責任か?Googleが争うAI Overviews判決と企業の備え方」の続編として位置づけられます。あの記事では「企業がやるべき3つの備え」の1番目として、自社名・自社サービス名のAI表示を定期確認することを提示しました。
当時想定していた監視は、Google、Bing、その他のAI検索で自社名を実際に検索して、表示内容を目視で確認する手作業ベースのものでした。月1回程度の頻度で、担当者が記録に残す運用です。
2026年6月16日、MicrosoftがBing Webmaster ToolsのAI Performance Reportに4つの新機能を追加したことで、この監視がツールで定量化できる段階に入りました。
出典:Bing公式ブログ「New AI Visibility Insights in Bing Webmaster Tools」(2026年6月16日)
AI Performance Reportで何が見えるようになるのか
新機能の中身を整理する前に、ベースとなるAI Performance Report自体の位置づけを押さえておきます。
前提:AI Performance Reportとは
AI Performance Reportは、2026年2月にBing Webmaster Toolsに追加された機能です。自社サイトがMicrosoft Copilot・Bing AI Answersでどれくらい引用されているかを可視化する公式ツールで、AI検索の引用元データを一次情報として確認できる、現時点ではほぼ唯一の手段です。
Googleも2026年6月3日にGenAI Performance Reportを公開しましたが、現時点で表示されるのは引用回数(インプレッション)のみで、引用シェアや問い合わせ意図といった深い分析項目は提供されていません。データの深さという点では、Bingが一歩進んだ状態にあります。
6/16追加の4つの新機能
今回追加された機能は、AI Performance Reportの分析軸を大幅に拡張するものです。
Intents(意図分類):AIに対する問い合わせが、どの意図カテゴリ(Informational/Commercial/Navigational/Research等)に属するかを分類して可視化します。自社が「情報収集系」で引用されているのか、「商品検討系」で引用されているのかが区別できます。
Topics(トピック分類):類似クエリをトピック単位でグルーピングします。たとえば「太陽光パネル」「住宅用太陽光発電」「太陽光エネルギー」といったクエリを1つのトピックとして集計できます。
Citation Share(引用シェア):特定クエリにおける自社の引用シェアを%で可視化します。「引用されているかどうか」だけでなく「全体の何%か」が分かります。
Compare(時系列比較):過去期間との比較表示ができます。サイト改修やコンテンツ追加の効果が、引用率の推移で測定できるようになります。
中小企業のWeb担当者が見るべき3つの指標
4つの新機能のうち、中小企業のWeb担当者がまず注目すべき指標を3つに絞って整理します。すべての機能を使いこなす必要はなく、優先順位を付けて運用に組み込むのが効率的です。
① Citation Share(自社の引用シェア)
もっとも実務に直結する指標です。競合と比べて自社の引用率がどの位置にあるかを、数値で把握できます。
従来の引用回数だけでは「自社が引用された絶対数」しかわかりませんでしたが、Citation Shareでは「そのクエリの引用枠の中で、自社が何%を占めているか」が分かります。同じクエリで競合が90%、自社が10%なら、自社の存在感は限定的という判断ができます。
② Intents別の引用パターン
2番目に重要なのが、自社がどの意図カテゴリで引用されているかの把握です。「商品検索系」で引用されているのか、「情報収集系」で引用されているのかで、Webサイトの位置づけが見えてきます。
商品ページとブログ記事のどちらが引用されているかを把握できれば、コンテンツ戦略の重点配分の判断材料になります。
③ Compare(時系列での変化)
3番目は時系列比較です。自社の引用率の推移を月単位で追えることで、サイト改修・コンテンツ追加・SEO施策の効果測定が可能になります。
従来のSEO指標(検索順位・クリック率)では測れない「AIへの引用されやすさ」が、独立した指標として運用できるようになります。
使い始める前にやっておくべき1つの作業
これらの機能を使う前提として、Bing Webmaster Toolsへの自社サイト登録が必要です。多くの中小企業はGoogle Search Consoleは登録していますが、Bing Webmaster Toolsは未登録というケースが少なくありません。
これまで「Bingのシェアは低いから登録優先度は下がる」という判断もありましたが、今回の機能追加で、Bing Webmaster Toolsを登録する価値は大幅に上がりました。AI検索の引用元データを取得できる公式ツールが、現時点ではBingのみだからです。
登録後の運用については、社内で誰がこのデータを月次確認するかを事前に決めておく必要があります。この発想は、社内のAI利用ルール作りと同じ運用設計の論点です。社内ルール整備の進め方については、デジタル庁の生成AIガイドライン2.0で何が変わった?企業の利用ルール作りに効く要点で整理した「運用体制」の軸と同じ発想で組み立てられます。
AI表示監視は、SEOの隣接領域として運用に組み込む
従来のSEOは「自社サイトを検索結果の上位に表示させる」が目的でした。AI表示監視は、AIが自社をどう要約・引用するかを見る作業です。両者は隣接領域ですが、別の指標として並走させる必要があります。
SEOチームとは別に「AI担当」がこのデータを見る運用に変えていく企業も、今後出てきそうです。GEO(Generative Engine Optimization)という新しい運用領域が、SEOの隣に立ち上がっていると整理できます。
まとめ|「測れない」が言い訳にならなくなった
6/16時点では、AI表示の監視は手作業ベースを想定していました。6/16から1日経って、その監視が公式ツールで定量化できる段階に入りました。「測定できないから後回し」という理由は、もう成立しない状況です。
本記事の起点となったAI検索の誤情報は誰の責任か?Googleが争うAI Overviews判決と企業の備え方とあわせて読むことで、「責任論への備え」と「具体的な監視手段」が両方そろう形になります。
こうした制度・ツール動向を継続的に追うこと自体も、属人化させずに仕組みにしておくと安定します。情報収集の仕組み化については、AIニュースの情報収集を仕組み化|毎朝10分で先回りして拾う型でまとめてあります。

