デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、「AIが付いているか」だけでは対象が決まりません。登録されたITツールの業務プロセスと経費区分を確認し、補助額を計算する必要があります。
通常枠では、業務の生産性を高めるソフトウェアの導入費用などが補助対象になります。ただし、購入総額と補助額、ソフトウェアの本数と業務プロセス数は別のものです。
この記事では、自社の導入計画がどの金額区分に当たるかを判断できるよう、対象経費・プロセス・補助率の順に整理します。
制度情報は2026年9月7日時点の公式資料で確認しています。制度全体や他制度との違いは、デジタル化・AI導入補助金2026の全体像と制度の選び方で扱い、本記事は通常枠の条件に絞ります。
この記事でわかること(結論)
- 対象経費:登録ソフトウェアの導入が必須で、登録されたオプションや導入支援なども条件付きで対象になります。
- 業務プロセス:業務プロセスを1種類以上含める必要があり、汎用・自動化・分析ツールだけでは申請できません。
- 補助額:5万円以上150万円未満は1プロセス以上、150万円以上450万円以下は4プロセス以上が必要です。
- 補助率:原則1/2以内です。所定の期間・賃金・従業員割合の条件を満たす場合は2/3以内になります。
- 追加条件:申請額や過去の交付決定歴により、賃上げ計画の要件も変わります。
通常枠の対象は、登録されたITツールの導入費用
通常枠は、中小企業・小規模事業者等が、IT導入支援事業者の提供する登録ITツールを導入するための枠です。AIサービスへの直接支払いを、後から一律に補助してもらう仕組みではありません。
自社の対象要件と、商品の登録内容を別々に確認する
申請者には、日本国内で事業を営む法人や個人事業主が含まれます。ただし、業種別の規模基準や対象外となる事業者の条件などを満たす必要があります。「従業員が少ないから対象」とは判断せず、公募要領の補助対象者・申請要件を確認してください。
商品側では、導入するプラン・機能・経費が、2026年の登録内容に含まれているかを確認します。サービス名が同じでも、予定している契約内容まで対象とは限りません。まず公式のITツール・IT導入支援事業者検索で候補を調べ、支援事業者へ登録番号と対象範囲を照会しましょう。
申請者とツールの要件は、通常枠の公募要領「補助対象者」「補助対象経費の内容と、補助対象となるITツールの分類・要件」に定められています。
ソフトウェア・オプション・役務では対象期間が違う
見積書を確認するときは、「導入一式」を次の区分に分けると、対象外の費用を混ぜずに整理できます。
| 経費区分 | 対象となる内容 | 期間・金額の注意点 |
|---|---|---|
| ソフトウェア | 登録されたソフトウェアの購入費、月額・年額の利用料 | 導入が必須。クラウド利用料などは最大2年分 |
| オプション | 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ | 最大1年分。ソフトウェアと同じ2年分とは限らない |
| 役務 | 導入・活用コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート | 役務全体の補助対象経費は200万円まで。保守サポートはソフトウェアの利用範囲内で最大2年分 |
役務の200万円は「補助対象として計算に入れられる経費」の上限であり、補助金が200万円支給されるという意味ではありません。導入・活用コンサルティングは1交付申請につき1つまでです。また、導入設定・研修・保守などには、登録時に対応付けられたソフトウェアと組み合わせる条件があります。(出典:通常枠の公募要領「2-2」)
パソコンや申請代行費は、通常枠の経費に含めない
通常枠では、パソコン・タブレットなどのハードウェアは補助対象外です。補助金の申請・報告に係る代行費、交通費・宿泊費、消費税、交付申請時に利用金額を定められないものなども除外されます。
一般的なAI研修を別途受講する費用と、登録ソフトウェアにひも付く導入研修費も分けて考えましょう。人材育成を目的とする研修との違いは、AI研修とAIツール導入で異なる制度の選び方で整理しています。(出典:通常枠FAQ、公募要領「補助対象外経費」)
業務プロセスは、ソフトの本数ではなく登録された機能分類で数える
通常枠のプロセス数は、導入する登録ソフトウェアが、どの業務機能の分類をカバーしているかで確認します。アカウント数や商品数を増やしても、そのままプロセス数が増えるわけではありません。
業務プロセスを少なくとも1種類含める
公募要領では、共通プロセス5種類と業種固有プロセスのうち、1種類以上を含める必要があります。分類と主な業務の対応は次のとおりです。
| 区分 | 主な業務 |
|---|---|
| 共P-01 | 顧客対応・販売支援 |
| 共P-02 | 決済・債権債務・資金回収 |
| 共P-03 | 供給・在庫・物流 |
| 共P-04 | 会計・財務・経営 |
| 共P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務 |
| 各業種P-06 | 業種固有の業務 |
| 汎P-07 | 汎用・自動化・分析ツール。単独での申請は不可 |
例えば、人事管理と給与計算が両方とも「共P-05」として登録されている場合、その2機能だけで2種類とは数えません。実際の登録プロセスを確認することが前提です。(出典:通常枠の公募要領「交付申請時のITツールの要件」)
汎用プロセスは、組み合わせた場合には数に含められる
汎用・自動化・分析ツールは、単独では申請できません。一方で、補助額150万円以上の区分では、公募要領が「共P-01」から「汎P-07」までのうち4種類以上を求めています。
したがって、異なる業務プロセス3種類と汎用プロセス1種類を含む登録内容であれば、プロセス数の要件上は4種類になります。「汎用AIだから必ず対象外」「汎用プロセスは数えられない」のどちらも正確ではありません。対象可否は、登録内容と組み合わせを含めて確認します。(出典:通常枠の公募要領「2-2(3)」)
補助率と補助額を計算し、150万円の境界を確認する
金額区分の判定に使うのは、導入費用の総額ではなく、申請する補助金の額です。補助対象外の費用を除いたうえで、該当する補助率を使って計算します。
補助率は原則1/2以内、2/3以内には賃金条件がある
通常枠の補助率は原則1/2以内です。2/3以内を利用するには、2024年10月から2025年9月までの間に、次の条件を満たす月が3か月以上あることを示す必要があります。
条件は、当該期間の地域別最低賃金以上、かつ2025年度改定後の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が、全従業員の30%以上であることです。現在の従業員数だけを見る条件でも、これから賃上げすると約束すれば満たせる条件でもありません。(出典:通常枠の公募要領「2-3」)
150万円ちょうどから4プロセス以上が必要
補助額とプロセス数の組み合わせは、次の2区分です。
| 申請する補助額 | 必要なプロセス数 |
|---|---|
| 5万円以上150万円未満 | 1種類以上。業務プロセスを必ず含む |
| 150万円以上450万円以下 | 4種類以上。業務プロセスを必ず含む |
例えば、補助対象経費が300万円で補助率1/2を使うと、計算上の補助額は150万円です。この額で申請するなら、4プロセス以上など上位区分の条件を満たす必要があります。金額の境界だけを見て、不要なソフトを追加しないことも大切です。(出典:通常枠の補助率・補助額)
対象外経費を分けた計算例
次は計算方法を示す仮定です。金額はすべて税抜きで、登録ソフトウェア60万円、対象条件を満たす導入設定20万円、パソコン10万円を購入するとします。補助率は1/2、登録内容には必要な業務プロセスが含まれるものとします。
補助対象経費は60万円+20万円=80万円です。パソコン10万円は含めません。計算上の補助額は80万円×1/2=40万円となり、総支出90万円に対する補助後の自己負担は50万円と消費税です。実際には支払いや実績報告を経て金額が確定するため、40万円の支給を保証する例ではありません。
申請額と交付決定歴により、賃上げ計画の条件も変わる
プロセス数と補助率だけで、通常枠の要件確認は終わりません。150万円以上を申請する場合や、2022~2025年に交付決定を受けている場合には、賃上げ計画の条件を確認します。
以下は、公募要領で定める適用除外事業者を除いた基本的な整理です。給与は、非常勤を含む全従業員の「1人当たり給与支給総額」の年平均成長率で確認します。
| 申請額・過去の交付決定 | 主な賃上げ計画の要件 |
|---|---|
| 150万円未満・2022~2025年の交付決定なし | 下記の交付決定歴・金額に基づく必須要件には該当しない。その他の申請要件や加点条件は別途確認 |
| 150万円未満・2022~2025年の交付決定あり | 1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる計画 |
| 150万円以上・2022~2025年の交付決定なし | 同3%以上の増加と、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする計画 |
| 150万円以上・2022~2025年の交付決定あり | 同3.5%以上の増加と、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする計画 |
対象となる計画期間は、交付申請時の翌事業年度以降の3年間です。該当する事業者は、申請時点で計画を従業員へ表明します。保険医療機関・保険薬局、所定の介護・社会福祉事業者、学校等には適用除外の規定がありますが、小規模事業者というだけで除外されるわけではありません。
計画未達や報告未実施などは返還に関わる場合があります。例外条件も含め、通常枠の公募要領「申請要件(テ)~(ニ)」「賃上げ目標未達時等の返還」を確認してください。
実務上の注意
通常枠では、対象経費の判定と、申請・契約の条件をセットで確認する必要があります。
見落とされがちな条件:過去の交付決定は、申請できる時期にも影響する
IT導入補助金2025の通常枠・複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、その交付決定日から12か月以内に2026年通常枠へ申請できません。賃上げ条件だけでなく、前回の制度年度・申請枠・交付決定日を確認してください。(出典:通常枠FAQ「過去に補助金を受けた場合の申請」)
間違えやすい用語・種別:別の枠の補助率やハードウェア条件を持ち込まない
通常枠の補助率は1/2以内または条件付きの2/3以内です。インボイス枠などの高い補助率や、パソコン購入の扱いを通常枠へ当てはめることはできません。見積書や案内資料に「最大○%」と書かれていても、どの枠の、どの経費に適用する数字かを確かめましょう。(出典:通常枠の公募要領「通常枠について」)
誤解しやすい前提:登録ツールでも、交付決定前に購入してよいわけではない
通常枠では、交付決定後に契約・導入・支払いを進めます。対象ツールであっても、交付決定前の購入は対象外です。2026年9月7日時点では交付申請を受け付けており、公式ページには5次締切が9月29日17時と案内されています。申請時は通常枠の最新スケジュールと、公募要領の事業実施手順を再確認してください。
まとめ
通常枠を検討するときは、「登録内容と対象経費」「業務プロセス数」「補助率と申請額」「自社に適用される追加要件」の順に確認します。AIツールの知名度や見積総額だけでは、対象可否や補助額は決まりません。
まずは支援事業者から登録番号・プロセス・経費内訳をそろえ、自社の過去の交付決定歴と賃金資料を照合しましょう。そのうえで、補助後の負担だけでなく、導入費用を先に支払えるかも含めて判断することが大切です。
よくある質問
通常枠の金額や対象判定で迷いやすい点を補足します。
AIツールなら何でも通常枠の対象になりますか?
いいえ。2026年の登録ITツールであることに加え、対象経費や業務プロセスなどの条件を満たす必要があります。商品名だけではなく、導入する契約内容まで確認してください。
ソフトウェアを4本買えば、150万円以上を申請できますか?
本数だけでは判断できません。必要なのは登録されたプロセスが4種類以上あることで、同じ分類のソフトを複数買っても、その分類は重複して数えません。
小規模事業者なら補助率は2/3になりますか?
通常枠では、小規模事業者という理由だけで2/3にはなりません。2024年10月~2025年9月の賃金水準・従業員割合など、所定の条件を満たす必要があります。
導入費用が150万円の場合、4プロセス以上が必要ですか?
境界は導入費用ではなく申請する補助額です。補助対象経費150万円に補助率1/2を使う場合、計算上の補助額は75万円なので、プロセス数は150万円未満の区分で確認します。
関連する用語・出典
見積書や公募要領を読むときは、次の用語を区別すると整理しやすくなります。
- IT導入支援事業者:登録ITツールの提供や導入支援を行い、申請者と交付申請を進める登録事業者です。
- 業務プロセス:販売・会計・人事など、ソフトウェアが対応する業務機能の分類です。
- 補助対象経費:補助額の計算に含められる経費です。購入総額とは一致しない場合があります。
- 補助額:対象経費に補助率を適用し、上限などの条件を踏まえて算定される金額です。
- 公式資料:通常枠の公募要領・FAQ・制度ページを本文の各説明にリンクしています。
※本記事は2026年9月7日時点の公式情報をもとにした一般的な制度解説です。個別の対象可否・採択・交付額を保証するものではありません。申請時は最新の公募要領・FAQを確認し、判断が分かれる条件は事務局やIT導入支援事業者へ照会してください。
この記事について
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