AI導入補助金の複数者連携枠とは?共同導入の条件と費用負担

代表事業者と複数の参画事業者が共同の目的でつながる共同導入の関係を示したアイキャッチ画像

複数社が同じソフトを購入するだけでは、共同導入の計画は固まりません。先に決めたいのは、共同で改善する業務、取りまとめる事業者、構成員別とグループ全体の費用です。

デジタル化・AI導入補助金2026の「複数者連携デジタル化・AI導入枠」は、取引でつながる企業や同じ商圏の事業者が連携し、ITツールで生産性を高める取り組みを支援します。(出典:複数者連携デジタル化・AI導入枠の公式案内)

商店街や取引先と導入を検討するときは、製品選びよりも共同事業の設計が先です。2026年9月11日に確認した公式資料をもとに、共同導入の条件、代表事業者の役割、費用の分け方を整理します。

この記事でわかること(結論)

共同導入を検討する際は、参加の条件、役割分担、経費区分を別々に確認し、同じ事業計画へ結び付けます。

  • 共同の目的:各社への導入だけでなく、データ連携や活用で何を改善するかを具体化します。
  • 取りまとめ:代表事業者と参画事業者を分け、利用・契約・支払いの担当を決めます。
  • 費用の整理:公式の経費区分に加え、構成員別の内訳とグループ全体の合計を管理します。
  • 合意の内容:自己負担、データの共有範囲、導入後の運用と効果確認まで決めておきます。

複数者連携デジタル化・AI導入枠を検討できる計画

判断の出発点は、複数事業者で連携する理由と、共同で改善する業務を説明できるかです。公募要領では、企業間のデータ連携、地域の人流分析、共同でのマーケティングなどを対象事業の考え方として示しています。(出典:公募要領 p.7–8)

共通ソフトの購入から、共同での活用まで考える

公式サイトの対象者には、商工団体等、まちづくり会社や観光地域づくり法人(DMO)等、複数の中小企業・小規模事業者等によるコンソーシアムが挙げられています。(出典:公式案内「補助対象者」)

たとえば、商店街で来街者の動きと各店の購買データを照らし合わせ、品ぞろえや情報発信を見直す計画が考えられます。公式サイトでも、地域のAIカメラと個店のPOSデータ分析を組み合わせる取り組みイメージが示されています。(出典:公式案内「具体的な取り組みイメージ」)

導入目的が「同じ製品を安く買いたい」で止まっているなら、誰のデータを、誰が、何の改善に使うのかから計画を見直してください。

構成員数とグループの事業計画を確認する

補助事業グループは、代表事業者と参画事業者を合わせて10者以上で構成する必要があります。(出典:公募要領 p.5、12)

同じ事業者の複数店舗・支店は、事業者単位で1者と数えます。(出典:公募要領 p.12) 店舗数だけで参加条件を判断せず、同一法人とみなされる親子会社等の扱いも確認してください。

グループには、労働生産性の年平均成長率を5%以上とする2年間の事業計画が求められます。(出典:公募要領 p.13) IT導入補助金2024・2025の通常枠または複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者が含まれる場合は、6%以上が要件です。(出典:公募要領 p.13)

取りまとめ主体と参画事業者の役割

代表事業者は共同事業を管理する役、参画事業者はITツールを利用して事業を進める役です。代表事業者が取りまとめることと、全費用を代表事業者が支払うことは同じではありません。(出典:公募要領 p.5–6、10)

共同の目的に対して代表事業者が全体管理を担い、参画事業者が個別利用と負担を担う関係図

代表事業者は書類集めだけでなく事業全体を管理する

代表事業者は構成員のうち1者が担い、申請・実績報告・効果報告の取りまとめと提出、導入の実施管理、事務局等との連絡を担当します。(出典:公募要領 p.5–6)

候補は、取りまとめ能力のある中小企業・小規模事業者等、所定の商店街組合等、商工会、商工会議所です。(出典:公募要領 p.8–9) 代表事業者には日本国内で法人登記されていることなどの要件があり、個人事業主が代表を務める前提では進められません。(出典:公募要領 p.9)

選定では、参加企業への連絡、費用と証憑の管理、導入後の改善まで担当できるかを確認しましょう。

参画事業者は利用担当と支払担当を明確にする

参画事業者は、対象となる中小企業・小規模事業者等の要件を満たし、代表事業者の管理のもとでITツールを利用します。(出典:公募要領 p.9–12) 国内の法人に加え、日本国内に事業の実施場所を持つ個人事業主も、参画事業者として検討できます。(出典:公募要領 p.9)

公募要領の実施形態には、代表事業者が契約・発注・支払いをまとめる形、参画事業者が各自で行う形、共同で行う形があります。(出典:公募要領 p.10) 利用者、契約者、支払者を対応させた一覧を作り、代表事業者の一括払いでも構成員別の導入内容が分かるようにします。

ITツールを提供する「IT提供事業者」と、データ活用等に助言する「外部専門家」は、導入側のグループ構成員とは別の立場です。(出典:公募要領 p.6) 販売会社や専門家を参加者数へ加える前提で、グループを組まないでください。

共同・個別の費用を公式の経費区分へ整理する

費用は、「何のための経費か」と「誰が使い、誰が払うか」を分けて整理すると、申請内容とグループ内の負担を照合しやすくなります。公式の経費区分は、基盤導入経費、消費動向等分析経費、その他経費です。(出典:公式案内「補助対象」)

基盤導入経費、消費動向等分析経費、その他経費の算定単位と事業全体経費への集約を示した図

公式の経費区分 主な対象 共同導入で整理する内容
基盤導入経費 インボイス対応の会計・受発注・決済ソフト、オプション、役務、対象ソフトの利用に必要な所定のハードウェアです。(出典:公募要領 p.17) 構成員ごとの利用機能、数量、導入先、費用負担を整理します。
消費動向等分析経費 地域・企業間のデータ連携や人流分析等に用いるソフト、役務、AIカメラ・ビーコン等です。(出典:公募要領 p.17) 共通の分析対象、利用する構成員、各社の改善業務との関係を整理します。
その他経費 代表事業者の取りまとめ事務費、外部専門家の謝金・旅費等です。(出典:公募要領 p.17–18) 担当者、作業内容、対象時間、単価、成果物や証憑を整理します。

「共同費」「個別費」はグループ内で管理するための分け方で、公式の経費区分を置き換える名称ではありません。設置場所だけで判断せず、機能と利用目的を確認して区分へ対応させます。

基盤導入経費のクラウド利用費は最大2年分、消費動向等分析経費のクラウド利用費は1年分です。(出典:公募要領 p.19) 利用期間を同じ条件として見積もらないようにしてください。

その他経費は、指定の補助事業事務処理マニュアルに沿った算出・計上と、証憑による確認が必要です。(出典:公募要領 p.18) 「共同事業だから必要な雑費」と一括せず、作業や支出の内訳を残します。

取りまとめ業務の人件費・資料作成費・会議費等は対象に挙げられていますが、補助金の申請・報告に係る申請代行費は対象外です。(出典:公募要領 p.18)

共同費は負担の理由を残し、内訳と合計をつなげる

予算整理用の一覧には、経費区分、利用する構成員、契約者、支払者、税抜金額、各社の負担額、負担割合の理由を記載する方法を勧めます。消費税は補助対象外のため、対象経費と分けます。(出典:公募要領 p.18)

たとえば、共用の分析システムは全体の費用を記録したうえで、参加企業ごとの負担額と合計を照合します。共用費用の全額を各社の明細へ重複して載せたり、利用実態を確認せず等分したりしないことが重要です。均等負担にする場合も、各社の利用内容と合意した理由を記録します。

公募要領の提出様式も、基盤導入経費、消費動向等分析経費、その他経費の内訳と、グループ全体の費用総括を分けています。(出典:公募要領 p.23) 社内用の負担表と申請用の費用総括が一致するように整理し、共用費の計上方法に迷う場合は契約案・利用者一覧とともに事務局へ確認してください。

補助率・上限は構成員単位とグループ単位で確認する

補助額は、構成員ごとの上限とグループ全体の上限を順に確認します。基盤導入経費と消費動向等分析経費を合わせた補助金の上限は、グループ全体で3,000万円です。(出典:公募要領 p.19–20)

経費 確認する単位 補助率・補助上限
基盤導入経費のソフトウェア・オプション・役務 構成員ごと 会計・受発注・決済のうち1機能なら50万円、2機能以上なら350万円が上限です。(出典:公募要領 p.20) 補助額50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内です。(出典:公募要領 p.20)
基盤導入経費のハードウェア 構成員ごと 補助率は1/2以内で、PC・タブレット等は10万円、レジ・券売機等は20万円が補助上限です。(出典:公式案内「補助率・補助額」)
消費動向等分析経費 対象ツールを導入する構成員数を用いてグループ全体を計算 補助率は2/3以内です。(出典:公募要領 p.20) 「50万円×対象ツールを導入する構成員数」と「実際の対象経費×2/3」の低い方が補助額になります。(出典:公募要領 p.20)
その他経費 グループ全体 補助率は2/3以内です。(出典:公式案内「補助率・補助額」) 補助上限は「(基盤導入経費+消費動向等分析経費)×10%×2/3」と200万円の低い方です。(出典:公式案内の注記3)

表の上限は購入価格ではなく、補助金額の上限です。基盤導入経費の役務には、構成員ごとに補助対象経費200万円という別の上限もあります。(出典:公募要領 p.20) その他経費の補助上限とは意味が異なるため、見積書では分けて確認してください。

その他経費も実際に必要な対象経費に基づいて計算するため、上限額を定額でもらえるわけではありません。自己負担の見積もりでは、補助対象外の費用も含めた支払総額を確認します。

共同導入前に合意しておくこと

グループ内では、導入費の負担だけでなく、導入後にデータとシステムを使い続ける責任まで合意しておきます。表は、共同事業を組み立てるための実務上の確認案です。

合意する項目 決めておきたい内容
共同で改善する業務 共有するデータ、改善したい作業、各社が受け持つ運用、効果を確認する担当を決めます。
契約・支払い・自己負担 契約者、請求先、支払者、立替の有無、各社の負担額、補助されない場合の資金負担を確認します。
データとシステムの管理 閲覧権限、共有してよい情報、管理責任者、障害時の連絡先、保守・更新費の負担を決めます。
参加変更と継続運用 参加企業の離脱や費用変更が起きた際の相談先、契約・データの扱い、事業計画への影響を確認します。

申請では、費用内訳のほか、実施体制や構成員の関係を示す資料等も求められます。(出典:公募要領 p.23) 商談前に「構成員と役割の一覧」「共同で改善する業務の説明」「費用内訳」をそろえると、IT提供事業者への相談内容が具体的になります。

準備中の見積もり・相談と、補助対象になる契約・発注は分けてください。交付決定前に実施した取り組みは補助対象外です。(出典:公募要領 p.17–18)

2026年9月11日時点の公募日程

確認できた次の締切は、3次締切の2026年10月30日(金)17:00です。(出典:事業スケジュール「複数者連携デジタル化・AI導入枠」) 通常枠やインボイス枠の日程と取り違えず、共同事業専用の欄を確認してください。

交付決定日は2026年12月10日(木)の予定です。(出典:事業スケジュール) 事業実施期間は交付決定から2027年5月31日(月)17:00まで、事業実績報告期限も2027年5月31日(月)17:00の予定とされています。(出典:事業スケジュール)

公式サイトは、確定した募集回のスケジュールを公表し、以降を随時更新すると案内しています。(出典:事業スケジュールの注記) 未公表の追加締切を見込んで参加企業との調整を先送りせず、提出前に最新日程を再確認しましょう。

実務上の注意

共同導入では、人数の数え方、ITツールの扱い、外部支援者の役割を取り違えると、費用計画の前提が変わります。

見落とされがちな条件:分析経費は参加名簿の人数だけで計算しない

消費動向等分析経費の上限計算で数えるのは、分析経費の対象ITツールを導入する構成員です。(出典:公募要領 p.20) グループに所属しているだけの事業者を自動的に含めず、導入・利用の関係を確認します。

構成員は別の補助事業グループへ重複して所属できず、通常枠・インボイス枠との重複申請にも制限があります。(出典:公募要領 p.21) 各社が個別に進めている補助金申請も、参加を決める段階で確認してください。

間違えやすい種別:登録ITツールの検索を必須条件に置き換えない

基盤導入経費では、事務局に登録されたITツールの導入が推奨されていますが、登録は必須ではありません。(出典:公募要領 p.17) 未登録の製品でも自由に対象になるわけではなく、IT提供事業者が機能等の要件を証明できることなどが必要です。(出典:公募要領 p.17)

登録の確認方法は登録ITツールの公式検索手順で確認できます。共同事業の経費判断には、検索結果だけでなく複数者連携デジタル化・AI導入枠の公募要領を使ってください。

誤解しやすい前提:IT提供事業者と外部専門家の兼任は断定しない

確認した公募要領では、IT提供事業者が外部専門家になることを認めていません。(出典:公募要領 p.6) 一方、交付規程には、請求内容を重複させない条件で兼任を認める記載があります。(出典:交付規程 第6条)

公式資料間で記載が一致していないため、兼任できる前提で契約や謝金の計上を進めないでください。候補事業者の役割と見積内訳を示し、適用される扱いを事務局へ確認して、回答を記録することを勧めます。

まとめ

複数者連携デジタル化・AI導入枠の検討では、共同で何を改善するか、誰が取りまとめるか、構成員別とグループ全体の費用をどう整理するかを先に決めます。製品名や見積総額だけでは、共同事業としての適合性を判断できません。

共同の目的と役割分担を整理した後、利用者・契約者・支払者を明確にし、公式の経費区分に沿った内訳へ落とし込みましょう。共用費の計上や支援者の兼任に不明点が残る場合は、契約前に事務局へ確認してください。

よくある質問

共同事業として判断する際は、組織名よりも、参加条件と各事業者の具体的な役割が重要です。

同じソフトを複数社で買えば申請できますか?

共同購入だけで判断することはできません。企業間のデータ連携や共同での活用など、生産性向上につながる事業計画と参加要件を確認します。(出典:公募要領 p.7–8、12–13)

商工会や商工会議所が代表でなければ申請できませんか?

商工会や商工会議所に限りません。取りまとめ能力のある中小企業等も候補になりますが、代表事業者は国内の法人であることなどの要件を満たす必要があります。(出典:公募要領 p.8–9)

代表事業者が導入費をすべて支払う必要がありますか?

全費用の一括払いだけが認められるわけではありません。参画事業者が契約・支払いを行う形や、共同で行う形も公募要領に示されています。(出典:公募要領 p.10) 利用者と支払者の関係を明確にして、費用内訳を整理してください。

共同事業ではなく、自社の会計・決済ソフトだけを導入したい場合はどうしますか?

共同事業の参加条件とは分けて、自社の導入目的に合う枠を確認します。インボイス対応の機能や対象経費は、インボイス対応類型の解説で整理しています。

関連する用語・出典

制度の読み合わせでは、事業者のまとまりを表す用語と、要件を定める公式資料を区別します。

※本記事は2026年9月11日に確認した公式情報に基づく一般的な案内です。個別の申請可否、採択、補助対象経費や交付額を保証するものではありません。公募日程・要件は変更される場合があります。申請時は最新の公募要領・交付規程・公式案内を照合し、資料間の記載差や個別の費用計上は事務局へ確認してください。

この記事について

AXメディアは、株式会社ジーズ AX事業部が運営しています。AX事業部では、AI研修・AIエージェント開発とあわせて、補助金・助成金の活用支援を提供しています。本記事は、公募要領・公式サイトなどの一次情報をもとに、AI導入を検討する中小企業の視点で整理しています。

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この記事を書いた人

AXメディア編集部のアバター AXメディア編集部 AXメディア公式ニュース編集部

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