営業・広告運用のAI研修は、「AI研修」という名前だけで助成対象になるわけではありません。
見るべきなのは、営業提案や広告分析など、職務に必要な知識・技能を身につける内容になっているかという点です。通常業務の作業代行ではなく、何を学び、どの仕事に活かす訓練なのかを明確にします。
厚生労働省の人材育成支援コースでも、対象となるOFF-JTには「職務関連訓練であること」が求められます。制度の基本は、人材開発支援助成金でAI研修費は出る?仕組みと落とし穴で確認できます。
ここからは、営業・広告の仕事をどのような演習に落とし込めば、習得する技能が伝わりやすくなるのかを具体的に見ていきます。
この記事でわかること(結論)
- 営業・広告で見る基準:部署名ではなく、提案準備、顧客説明、広告分析など、受講者が担当する職務と研修内容を対応させます。
- 営業向け演習:提案書を納品する作業ではなく、根拠確認、構成作成、修正判断などの技能を練習します。
- 広告向け演習:広告を実運用する作業ではなく、数値から事実・仮説・追加確認事項を分ける技能を練習します。
- 成果物の位置づけ:提案構成案や分析メモは習得状況を確認する説明用例であり、すべての申請で一律に提出が義務付けられる書類ではありません。
- 受講記録:通学・同時双方向型とeラーニング・通信制では受講要件が異なるため、実施方法に合わせて記録します。
営業・広告では「職務」を作業単位まで分ける
「営業職だからAI研修」「広告担当だからデータ分析研修」と決めるのではなく、本人が担当する作業と、研修で身につける技能を対応させます。同じ営業部でも、商談準備、提案資料作成、既存顧客フォローでは必要な技能が異なります。
厚生労働省の2026年8月3日版「人材育成支援コースのご案内」では、OFF-JTは通常の生産活動や就労の場における業務遂行の過程外で行う訓練とされ、対象となる訓練には職務との関連が必要です。職務関連訓練の例として、「営業企画」の担当者が「Webマーケティングの手法を身につけさせるための訓練」を受けるケースも示されています(出典:厚生労働省「令和8年度版 人材育成支援コースのご案内」2026年8月3日版、p.31、2026年9月15日確認)。
| 担当する仕事 | 研修で身につける技能の例 | 演習で確認すること |
|---|---|---|
| 商談前の提案準備 | 顧客条件と商品情報を分け、提案構成へ整理する | 根拠がある情報、不足情報、AIが補ってはいけない情報を区別できるか |
| 顧客向け資料の下書き | 商品情報を顧客課題に合わせて再構成し、AI出力を修正する | 事実と表現を確認し、根拠のない効果や実績を削除できるか |
| 広告レポートの確認 | 表示回数、クリック、CV、費用などの数値から変化を読む | 実測値とAIが出した仮説を分け、次に確認するデータを決められるか |
| 広告改善の検討 | 複数の仮説を比較し、検証の優先順位を付ける | AIの提案をそのまま採用せず、追加確認が必要な点を説明できるか |
上表は、研修内容を具体化するための説明用例です。個別の研修が助成対象になることを示す採択例ではありません。
営業向け演習は「提案書を完成させる仕事」ではなく技能習得にする
営業向けの演習では、顧客へ実際に納品する提案書を完成させることではなく、提案を組み立て、AI出力を検証・修正する技能を身につけることを目的にします。

事業展開等リスキリング支援コースの2026年8月3日改定では、生成AIを使って商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ訓練が助成対象の具体例として示される一方、特定業務への具体的な適用を伴わない汎用的なプロンプト作成研修は対象外の例とされています(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)令和8年8月3日からの変更点」、2026年9月15日確認)。
営業提案の演習は、たとえば次のように組み立てられます。
- 学習用の顧客条件と商品情報を読む:顧客の課題、予算、導入条件、商品仕様などを整理する
- 事実と不足情報を分ける:資料に書かれている事実と、追加確認が必要な情報を区別する
- AIで提案構成のたたき台を作る:顧客課題と商品情報を対応させ、説明順を作る
- 人が検証・修正する:根拠のない効果、存在しない実績、顧客条件と合わない提案を除き、修正理由を説明する
実案件の情報を題材にする場合でも、訓練の目的と通常業務を混同しないことが重要です。人材育成支援コースの案内では、通常の事業活動として遂行されるものを目的とするOFF-JTは対象外とされる一方、事業外訓練で自社の業務情報を題材として扱い、業務上の成果物を作ることを目的としない学習は別の扱いになる考え方が示されています。顧客へ納品する提案書の作成代行ではなく、提案を作るための知識・技能を学ぶ時間として区別できる設計にしてください(出典:同パンフレット、p.38、2026年9月15日確認)。
広告運用演習は「数値・仮説・追加確認」を分ける
広告向け研修では、実際の広告アカウントを代行運用するのではなく、数値を読み、AIの仮説を検証し、次に確認する情報を決める技能を練習すると職務との関係が明確になります。
説明用の演習として、表示回数、クリック数、CV数、広告費、クリエイティブ、配信対象などを含む学習用データを用意した場合、次の順で進められます。
| 演習の段階 | 受講者が行うこと | 確認する技能 |
|---|---|---|
| 1. 数値を読む | 前期間との増減や、広告ごとの差を整理する | データに書かれている事実を正しく拾えるか |
| 2. AIに仮説を出させる | 数値変化の理由として考えられる候補を複数出す | 事実と推測を混同していないか |
| 3. 仮説を絞る | 根拠が弱い仮説を除き、検証可能なものを残す | AIの回答を批判的に確認できるか |
| 4. 追加確認を決める | 配信面、検索語句、曜日、LPなど、次に見るデータを挙げる | 分析を次の検証行動へつなげられるか |
研修中のメモは「確認できた事実」「AIが出した仮説」「追加で確認するデータ」の3欄に分けると、AIへ分析を丸投げせずに考える練習になります。実際の広告費を動かしたり、入札や配信設定を変更したりすることを研修成果にするのではなく、判断の手順を再現できる状態を目標にします。
成果物は一律の提出義務ではなく、技能を確認する設計材料
提案構成案や広告分析メモを作る演習は有効ですが、これらがすべての助成金申請で一律に提出を義務付けられた法定書類という意味ではありません。研修の目的と習得状況を具体化するための設計例として考えてください。
| 演習で作るものの例 | 研修で確認すること | 位置づけ |
|---|---|---|
| 提案構成案 | 顧客条件と商品情報を整理し、根拠のある構成を作れるか | 技能確認のための演習例 |
| AI出力の修正記録 | 誤りや根拠不足を見つけ、修正理由を説明できるか | 技能確認のための演習例 |
| 広告分析メモ | 事実・仮説・追加確認事項を分けられるか | 技能確認のための演習例 |
一方、計画届や支給申請で必要になる正式な書類は、利用するコースや訓練方法によって決まります。人材育成支援コースでは、計画段階のカリキュラム等について、実施目的、日時、訓練日ごとの内容、場所、実訓練時間、受講料など、訓練方法に応じた情報を確認できる資料が求められます。演習の成果物と、制度上必要な申請・証明書類は分けて管理してください。
受講記録は通学・ライブ研修とeラーニングで分けて確認する
「受講率80%」をすべてのオンライン研修へ一律に当てはめないことが重要です。人材育成支援コースでは、通学制・同時双方向型の通信訓練と、eラーニング・通信制で受講要件が異なります。
| 実施方法 | 人材育成支援コースでの主な受講要件 | 記録で確認すること |
|---|---|---|
| 通学制・同時双方向型の通信訓練 | 実訓練時間数の8割以上を受講 | 実施日、時間、受講した時間、実施内容など |
| eラーニング・通信制 | 訓練期間中に訓練を修了すること。LMSや添削課題等で実施状況を確認できること | 受講開始・終了、進捗、修了状況など、実施方法に応じた記録 |
同パンフレットでは、eラーニング・通信制について、1コース当たりの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上であることなど、通学制とは異なる要件も示されています(出典:令和8年度版 人材育成支援コースのご案内、p.35、2026年9月15日確認)。
オンライン研修の実施方法ごとの違いは、オンラインAI研修は助成金対象?eラーニングとライブ研修の違いで確認できます。実際に利用するコース・訓練方式の最新要件を基準にしてください。
申請前は「職務から記録まで」を1枚で対応させる
営業・広告向けの研修では、職務、課題、習得技能、演習、受講記録を横につなげて確認すると、研修内容のねじれを見つけやすくなります。
| 確認項目 | 営業の例 | 広告の例 |
|---|---|---|
| 担当職務 | 顧客提案の準備・資料作成 | 広告レポートの分析・改善検討 |
| 業務課題 | 情報整理と提案構成に時間がかかる | 数値から改善仮説を出す工程が属人化している |
| 習得技能 | AIで構成案を作り、根拠を確認して修正する | AIの仮説と実測値を分け、追加確認を決める |
| 演習 | 学習用の顧客条件から提案構成を作り、誤りを修正する | 学習用広告データから事実・仮説・追加確認を整理する |
| 受講記録 | 実施方法に応じた日時・内容・受講状況 | 実施方法に応じた日時・内容・受講状況 |
全社員向けのAI基礎研修や、初級・中級・管理職ごとの一般的な研修プログラムを設計したい場合は、生成AI研修プログラムの作り方。従業員教育で押さえる内容と進め方でカリキュラム全体を確認できます。
実務上の注意
営業・広告のAI研修では、職務との関係だけでなく、通常業務との区別、研修方式ごとの要件、申請時点で有効な制度資料を確認してください。
実案件の作業代行を研修目的にしない
OFF-JTは業務遂行の過程外で行う訓練です。自社の業務情報を教材として使える場合でも、顧客への納品物や実際の広告改善案を完成させること自体を目的にせず、知識・技能の習得と確認が中心になるように設計します。
汎用的なプロンプト研修だけで職務関連性を説明しない
特に事業展開等リスキリング支援コースのDX・GX訓練では、2026年8月3日の改定で、特定業務への具体的な適用を伴わない汎用的なプロンプト作成研修が対象外の例として示されています。「営業担当向け」という名称だけでなく、何の作業でどの技能を使うかまで確認してください。
受講要件はコースと実施方法を確認する
8割以上の受講要件は、人材育成支援コースの通学制・同時双方向型の通信訓練に示されている条件です。eラーニング・通信制では修了やLMS等による実施状況確認など別の要件があるため、同じ基準を一律に当てはめないでください。
まとめ
営業・広告運用のAI研修を助成金の対象として検討するときは、「AIを学ぶ」ではなく、受講者の職務→業務課題→習得技能→演習→受講記録をつなげて整理します。
営業では、提案書を完成させる作業ではなく、根拠を確認しながら構成・文章を修正する技能を練習します。広告では、実際の運用代行ではなく、数値・仮説・追加確認を分けて判断する技能を練習します。演習で作る提案構成案や分析メモは、技能確認のための例であり、一律の法定提出物ではありません。
よくある質問
営業資料をAIで作る研修は助成金の対象になりますか?
対象になり得ますが、AIを使うことだけでは決まりません。受講者の営業職務に必要な知識・技能を習得する訓練として内容が具体化され、利用するコースの支給要件を満たすかを確認する必要があります。
広告データをAIで分析する研修も対象になり得ますか?
職務として広告分析を担当する人が、数値の読み方や仮説検証などの専門的な技能を習得する内容であれば検討できます。個別の対象可否はカリキュラム、対象者、訓練方法、利用コースを含めて確認してください。
研修で作った提案構成案や分析メモは必ず提出する必要がありますか?
いいえ。本記事で示した成果物は、習得する技能を具体化するための演習例です。制度上必要な提出書類は、利用するコースや訓練方法の最新パンフレット・支給要領・申請様式で確認してください。
実際の顧客案件を使って演習してもよいですか?
自社の業務情報を教材に使うこと自体と、通常業務の成果物を作ることは分けて考える必要があります。OFF-JTとして実施する場合は、顧客への納品物を完成させる作業ではなく、知識・技能の習得を目的として区別できる設計かを確認してください。
eラーニングも受講率80%以上が必要ですか?
人材育成支援コースでは、8割以上の受講要件は通学制・同時双方向型の通信訓練に示されています。eラーニング・通信制は訓練期間中の修了やLMS等による実施状況確認など別の要件があるため、一律に80%基準を適用しません。
関連する用語・出典
- 人材開発支援助成金:事業主等が労働者へ職務に関連した訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練中の賃金の一部等を助成する制度。
- OFF-JT:通常の生産活動や就労の場における業務遂行の過程外で行う訓練。
- 人材育成支援コース:職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練等を対象とするコース。
- 2026年8月3日の変更:事業展開等リスキリング支援コースのDX・GX訓練について、職務へ間接的に必要な内容や職種共通の内容など、対象外となる考え方を明確化した変更。
- 一次情報:厚生労働省 人材開発支援助成金、令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(2026年8月3日版)、事業展開等リスキリング支援コース 令和8年8月3日からの変更点。
※本記事は2026年9月15日時点の厚生労働省資料をもとに、営業・広告担当者向けAI研修の計画整理方法を解説したものです。助成金の支給を保証するものではありません。対象可否、訓練方法、提出期限、必要書類は利用するコースや計画内容により異なるため、最新のパンフレット・支給要領と管轄労働局の案内をご確認ください。
この記事について
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