AI研修の案内に「12時間」と書かれていても、助成金で数える実訓練時間が12時間になるとは限りません。食事休憩や通常業務は除外する一方、訓練の合間の小休止などは、一定の上限内で含められる場合があります。
人材開発支援助成金のOFF-JTを計画するときは、「何時間集まるか」だけでなく、何を学ぶ時間か、どこまで算入できるか、各受講者が実際に何時間受けたかを分けて確認します。
この記事では、2026年9月9日時点の公式資料をもとに、AI研修の内容と時間を点検する方法を解説します。助成率の比較ではなく、カリキュラムの算入・除外と受講記録の照合に絞って整理します。
この記事でわかること(結論)
OFF-JTの時間は、研修の日程表をそのまま合計せず、訓練内容・休憩等の扱い・受講者の実績を順に確認して数えます。
- OFF-JTの判定:場所の名前ではなく、通常業務と区別された訓練かを見る
- 除外する時間:食事休憩、移動、通常業務、対象外の内容などを分ける
- 小休止等の例外:短い休憩や開閉講式は、定められた上限内で算入できる場合がある
- 記録の分け方:コースの実訓練時間、本人の受講時間、賃金助成の対象時間を混同しない
OFF-JTとOJT・通常業務をどう見分けるか
OFF-JTは、通常の生産活動や業務の遂行過程から区別して行う職業訓練です。外部講師がいることや、会議室で実施することだけでは判定できません。
| 区分 | 基本的な考え方 | AIを使う場面での確認点 |
|---|---|---|
| OFF-JT | 通常業務から区別された講義・実習等で知識や技能を学ぶ | 学習目的、教材、講師の指導、カリキュラムがあるか |
| OJT | 指導者の下で、実際の業務を通じて技能を学ぶ | 実務で学ぶ訓練として、該当するメニューの要件に合うか |
| 通常業務・業務代行 | 会社の仕事や納品物を完成させることが中心 | 通常の資料作成や業務処理を「AI研修」と呼び替えていないか |
OJTにも助成対象となり得る訓練メニューはありますが、OFF-JTの時間へ足してよいという意味ではありません。AIを操作した時間でも、何のために実施したかをカリキュラムと実態で確認してください。(出典:人材育成支援コースの支給要領「用語の定義」「支給対象となるOFF-JT」)
実訓練時間へ算入する時間・除外する時間
実訓練時間は、食事休憩を除いた総訓練時間から、助成対象にならない内容や時間を差し引いて確認します。ただし、すべての休憩を一律に除く扱いではありません。
食事・移動と、訓練の合間の小休止は扱いが異なる
通学制・同時双方向型の研修で確認したい主な区分は次のとおりです。
| 時間の内容 | 実訓練時間への扱い | 確認点 |
|---|---|---|
| 対象要件を満たす講義・実習 | 算入する | 内容と実施方法が該当メニューの要件に合っているか |
| 昼食等の食事を伴う休憩 | 算入しない | 総訓練時間を整理する段階で除く |
| 会場間などの移動 | 算入しない | 日程表の移動枠を講義時間に含めない |
| 訓練の合間の小休止 | 上限内で算入できる | 1回30分、1日累計60分まで。超える部分は除く |
| 簡易な開講式・閉講式・事務連絡のオリエンテーション | 上限内で算入できる | 一つの職業訓練実施計画につき累計60分まで |
| 通常業務や対象外の訓練内容 | 算入しない | 講座名ではなく実際に行う内容を確認する |
例えば、訓練の合間に20分の小休止が4回ある日は、合計80分のうち算入できるのは60分までです。開講式と閉講式も、それぞれ60分ではなく、同じ計画内で合計して上限を確認します。
eラーニング・通信制では小休止を実訓練時間に含める扱いを使いません。また、能力検定やキャリアコンサルティングには、計画への位置付け等に応じた別の取扱いがあります。試験や面談なら何でも算入できるとは考えないでください。(出典:支給要領「06015」「06017」、人への投資促進コースのご案内「実訓練時間数に含めることができるもの」)
研修前後の宿題を、そのまま講義時間へ足さない
講義の前後に教材を配り、自分で行う予習・復習・確認テストは、講義に付随する学習であるだけでは総訓練時間・実訓練時間に算入できません。
会社が提出を求めた宿題でも、実際にかかった時間を自己申告して足せばよいというものではありません。別の訓練形式として要件を満たすかも含め、講座の構成と実施方法を確認する必要があります。(出典:人への投資促進コースのご案内「よくあるご質問」)
2日間・12時間の予定を数え直す例
集合から終了まで合計12時間ある日程でも、実訓練時間が9時間にとどまる場合があります。次は時間の違いを確認するための仮の例です。
研修案内の2日間の枠に、次の内容が含まれていたと仮定します。講義・実習は内容と実施方法の要件を満たし、小休止も訓練の合間に取るものとします。
| 日程に含まれる内容 | 2日間の合計 | 実訓練時間への算入 |
|---|---|---|
| 対象になる講義・実習 | 480分 | 480分 |
| 小休止(各日20分を1回) | 40分 | 40分 |
| 開閉講式・事務連絡 | 20分 | 20分 |
| 食事休憩(各日60分) | 120分 | 0分 |
| 通常業務と区別できない作業 | 60分 | 0分 |
| 合計 | 720分=12時間 | 540分=9時間 |
この例では、食事休憩120分を除いた総訓練時間が600分です。さらに通常業務60分を除くため、実訓練時間は540分になります。
実訓練時間10時間以上を求めるメニューでは、この計画のままでは時間要件を満たしません。通常業務を「演習」と表記し直して数えるのではなく、必要な知識・技能を学ぶ訓練として計画自体を見直します。算入・除外の根拠は、人材育成支援コースの支給要領で確認できます。
コースの時間・本人の受講時間・賃金助成を分ける
時間要件の確認では、研修コースが成立する時間、本人が受講した時間、賃金助成に使える時間を別々に整理します。三つの数字が常に一致するとは限りません。
| 時間の種類 | 確認すること |
|---|---|
| コースの実訓練時間 | 対象外の時間を除いたコース全体が、該当メニューの最低時間を満たすか |
| 本人の受講時間 | 遅刻・早退・欠席等を反映し、本人が必要な受講割合を満たすか |
| 賃金助成の対象時間 | 実際に受講した時間のうち、所定労働時間内などの支給要件を満たす部分は何時間か |
例えば、人材育成訓練の通学制・同時双方向型では、原則として1コースの実訓練時間が10時間以上で、本人が8割以上を受講することが条件です。コースが10時間、本人の受講が8時間なら、受講割合の条件を満たす場合があります。10時間は1日ごとの条件ではありません。
一方、会社の指示で所定労働時間外に受けた訓練は、訓練時間へ算入できても賃金助成では対象外となる場合があります。労働時間としての扱いと助成金の計算は分けて確認してください。(出典:支給要領「06012」「06013」「06024」)
また、人材育成訓練や事業展開等リスキリング支援コースの通常の通学制等では原則10時間以上ですが、すべてのメニューが同じ数え方ではありません。eラーニング・通信制では標準学習時間や標準学習期間、定額制訓練では対象者ごとの修了講座の合計を確認します。(出典:人材育成支援コースのご案内、事業展開等リスキリング支援コースのご案内、人への投資促進コースのご案内)
配信形式による違いの詳細は、オンラインAI研修とeラーニングの条件で確認できます。
カリキュラムと受講記録を照合する4つの手順
時間の確認は、計画時の日程表と、実施後の本人別記録を照合できる形にすることが重要です。研修会社の修了証だけで時間の内訳が分かるとは限りません。
- 日程を内容別に分ける。講義、実習、食事休憩、小休止、開閉講式、移動などに分け、開始・終了時刻を記録します。
- 算入・除外の根拠を付ける。対象外となる内容と、小休止等の上限を確認して実訓練時間を計算します。判断が分かれる項目は、適用するメニューの資料に照らして確認します。
- 本人別の受講実績を残す。遅刻・早退、欠席、途中の業務対応などを反映し、受けていない時間と理由を記録します。
- 勤怠・賃金の記録と照合する。所定労働時間と実際の受講時間を合わせ、賃金助成の対象となる部分を別に計算します。
公式のOFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)にも、実施時間帯、除外時間数、実訓練時間数、受講時間数、賃金助成対象時間数などの欄があります。対象労働者ごとに作成する様式であり、同じ研修でも全員の時間を同じにするものではありません。
使用する様式は、計画届の提出日別の申請書類案内で確認してください。制度全体の準備は、人材開発支援助成金の基本と注意点で整理しています。
実務上の注意
OFF-JTの対象可否は、時間の長さだけでは決まりません。実施方法、通常業務との境界、メニュー固有の例外も確認します。
動画の視聴時間をそのまま通学研修へ足さない
事前動画や復習用教材がある場合は、講義の付随学習なのか、要件を満たす別の訓練部分なのかを確認します。受講者が画面を開いていた時間を、通学制の実訓練時間へ単純に合算することは避けてください。(出典:人への投資促進コースのご案内「対象となるOFF-JT」「よくあるご質問」)
自社資料を使う演習と、業務改善コンサルティングを区別する
事業外訓練で自社情報を題材に学ぶことと、実際の経営・業務改善の指導を受けることは別です。AIを使って会社の成果物を完成させることが中心なら、講師が同席していても、通常業務やコンサルティングと判断される場合があります。
「何を完成させたか」だけでなく、誰がどの技能を学び、どの指導を受けるのかが分かる教材・計画を用意してください。(出典:人への投資促進コースのご案内「対象とならないOFF-JT」)
一つのコースの対象外条件をすべてに広げない
職種を問わない共通的な内容にも、メニューごとの特例があります。例えば人材育成支援コースには、職業人として共通して必要な内容について、実訓練時間の2分の1未満などの条件で認める取扱いがあります。
人への投資促進コースの定額制訓練や自発的職業能力開発訓練にも、固有の取扱いがあります。「一般的なAI知識だからすべて対象外」と一律に除外せず、申請するメニューの根拠を確認してください。(出典:支給要領「06016」、人への投資促進コースのご案内「対象とならないOFF-JT」の特例)
まとめ
AI研修のOFF-JTを確認するときは、日程の長さではなく、助成対象になる内容と実際の受講時間を数えることが大切です。食事・移動・通常業務を除き、小休止や開閉講式は決められた上限で扱います。
まず日程表を内容別に分け、実施後には本人別の受講記録と勤怠を照合してください。対象か迷う内容が残ったら、研修名だけで相談せず、具体的な教材・時間割・実施方法を示して管轄の労働局へ確認しましょう。
よくある質問
研修時間は、一律に全員同じ数字へまとめず、対象となる時間と本人の受講実績を区別して確認します。
研修中の休憩はすべて実訓練時間から除きますか?
食事を伴う休憩は除外しますが、訓練の合間の小休止は1回30分・1日累計60分まで算入できる場合があります。eラーニング・通信制には、この小休止の扱いを当てはめません。
10時間以上という条件は1日ごとですか?
通常の人材育成訓練などでは、1コースの実訓練時間についての条件です。複数日に分ける場合も、対象外の時間を除いて合計します。
10時間の研修を8時間受ければ、助成対象になりますか?
原則8割以上の受講を求める訓練では、受講割合の条件を満たす場合があります。ただし、訓練内容や対象者、費用などの条件も別に確認する必要があり、支給を保証するものではありません。
研修前後の宿題にかかった時間を加えてよいですか?
講義に付随する予習・復習・確認テストは、それだけでは総訓練時間や実訓練時間に算入できません。別の訓練として扱う場合も、その形式の要件を満たすか確認する必要があります。
関連する用語・出典
コースの時間と本人の実績を別の用語で管理すると、時間要件と助成額の計算を混同しにくくなります。
- OFF-JT:通常の生産活動・業務の遂行過程と区別して実施する職業訓練
- OJT:指導者の下で、実際の業務を通じて行う訓練
- 総訓練時間数:訓練計画の時間を整理したもので、食事を伴う休憩時間は含めない
- 実訓練時間数:総訓練時間から、助成対象とならない内容や時間を除いた時間数
- 賃金助成対象時間数:本人の受講時間のうち、所定労働時間等の支給要件に合う時間数
※本記事は2026年9月9日時点で確認した厚生労働省の公式資料に基づく一般的な情報です。対象となる内容・時間は、申請するコースや訓練形式、適用される支給要領によって異なります。個別の訓練の対象可否や助成金の支給を保証するものではありません。不明点は、開始前に管轄の労働局へ確認してください。
この記事について
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