オンラインAI研修も助成対象になり得ます。ただし、講師とその場でやり取りするライブ研修と、録画教材を学ぶeラーニングでは、時間の数え方・受講記録・賃金助成が異なります。
「オンラインで受けられる」「修了証が出る」という説明だけでは、助成金の要件を満たすか判断できません。受講形式、料金の仕組み、申請するコースを分けて確認する必要があります。
本記事は、2026年9月7日時点の人材開発支援助成金の公式資料をもとに、企業が業務として受講させるAI研修を扱います。主な対象は、人材育成支援コースの「人材育成訓練」、事業展開等リスキリング支援コースの個別講座、人への投資促進コースの「定額制訓練」です。助成金全般の共通ルールではありません。
この記事でわかること(結論)
- ライブ研修:講師と同時に質疑応答できる「同時双方向型」であることを確認します。
- eラーニング:標準学習時間などの条件に加え、LMSによる進捗管理と訓練期間内の修了が必要です。
- 助成の違い:eラーニングや定額制訓練には賃金助成がなく、経費助成の上限も申請区分によって変わります。
- 受講記録:ライブでは出席・受講時間、eラーニングでは学習履歴・修了・本人の実施報告を残します。
- 改定の確認:リスキリングの受講回数制限と、3コース共通の新しい報告書では、適用を判断する日付が異なります。
ライブ研修とeラーニングは、学び方と確認方法が違う
助成金上の区分は、会議アプリや動画サービスの名前では決まりません。講師と同時にやり取りする訓練なのか、学習システムで進める訓練なのかを確認します。
同時双方向型は、受講中に講師へ質問できる研修
「同時双方向型の通信訓練」は、情報通信技術を使った遠隔講習のうち、一方的な講義ではなく、受講中に講師へ質疑応答できるなど、同時かつ双方向で実施するものです。
したがって、ライブ配信であっても、講師とのやり取りができない一方向の配信を、そのまま同時双方向型とは扱えません。出欠だけでなく、研修の進め方も受講案内で確認しましょう。(出典:人材育成支援コース詳細版「訓練の実施方法」)
eラーニングは、LMSによる進捗管理が前提
eラーニングは、パソコンなどを使う遠隔講習のうち、LMSなどのシステムで訓練の進捗を管理するものです。LMSは、受講者ごとの学習状況を記録する学習管理システムを指します。
各訓練の修了日、受講開始・終了日時、受講時間数、進捗率などを確認できる必要があります。録画動画のURLを配り、「見ました」と自己申告してもらうだけでは、必要な実施状況の確認ができません。(出典:リスキリング支援コース詳細版「訓練の実施方法」)
「10時間」と「修了」の基準を取り違えない
次の表は、人材育成支援コースの人材育成訓練と、リスキリング支援コースの個別講座についての基本整理です。定額制サービスや、実習を組み合わせる別メニューには、そのまま当てはめません。
| 確認点 | 同時双方向型のライブ研修 | eラーニング |
|---|---|---|
| 時間要件 | 原則として1コースの実訓練時間数が10時間以上 | 原則として1コースの標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上 |
| 受講者の要件 | 原則として実訓練時間数の8割以上を受講 | 訓練期間中に修了し、LMSなどで実施状況を確認できること |
| 実施主体 | 事業内訓練・事業外訓練のいずれも、各要件を満たせば対象 | 事業外訓練が対象。事業内訓練は対象外 |
| 賃金助成 | 所定労働時間内の受講と賃金支払いなどの要件を満たせば対象 | 対象外 |
表の「標準学習時間」は、研修側が定める学習時間です。受講者がゆっくり視聴した時間や、繰り返し再生した時間を足して、講座の標準学習時間を増やすことはできません。また、単に動画を閲覧できる契約期間を、標準学習期間と自己判断で読み替えないようにしてください。(出典:人材育成支援コース詳細版、リスキリング支援コース詳細版)
経費助成と賃金助成は、申請コース・料金形態で確認する
受講形式が同じでも、助成率や上限が共通とは限りません。特に、1講座ごとの契約と、複数講座を定額で受ける契約は分けて確認します。
個別講座と定額制訓練の違い
定額制サービスは、1訓練当たりの対象経費が明確ではなく、同じ料金で複数の訓練を受けられるものです。eラーニングだけでなく、同時双方向型のライブ研修で実施されるサービスも含まれます。
人への投資促進コースの定額制訓練では、各対象労働者が修了した訓練の標準学習時間を合計し、支給申請時に10時間以上であることなどが必要です。会社全体の合計時間でも、ログインしていた時間でもありません。(出典:人への投資促進コース詳細版「定額制訓練」)
コース別の上限・賃金助成を混ぜない
オンラインAI研修を検討するときの主な確認点を、今回扱う3つの申請区分で比較します。
| 申請区分 | 経費助成で見る点 | 賃金助成で見る点 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コースの人材育成訓練 | 企業規模・対象労働者等で助成率が異なる。eラーニングの限度額も標準学習時間等に応じて確認 | 同時双方向型は要件を満たせば対象。eラーニングは対象外 |
| 事業展開等リスキリング支援コースの個別講座 | eラーニングは1人・1職業訓練実施計画当たり中小企業15万円、大企業10万円が限度。ライブと組み合わせる場合も含む | 同時双方向型は要件を満たせば対象。eラーニング部分は対象外 |
| 人への投資促進コースの定額制訓練 | 基本助成率は中小企業60%・大企業45%。限度額は1人1か月当たり2万円 | 定額制訓練は対象外。ライブ形式のサービスでも同じ |
定額制訓練の助成率には賃金要件等を満たした場合の引上げがあり、1か月未満の期間の限度額は日数による計算になります。表の金額だけで支給額は確定しません。職務との関連、対象者、経費負担、修了などの条件も必要です。(出典:人材育成支援コース詳細版「助成率・助成額」、リスキリング支給要領「0510」、人への投資促進コース詳細版「助成率・助成額」「限度額など」)
リスキリング支援コースにも定額制サービスを対象とする取扱いがありますが、事業展開等の目的要件を含めて別に確認します。制度を選ぶ段階では、AI研修に使える助成制度の比較も参考にしてください。
混合型研修は、すべてをライブ扱いにしない
事前動画とライブ演習を組み合わせる場合、動画部分が単なる予習なのか、助成対象のeラーニング訓練なのかを区別します。リスキリング支援コースの個別講座では、eラーニングを含む訓練に、15万円・10万円の経費助成限度額が適用されます。
一方、予習・復習として扱う時間は、原則として実訓練時間数に含めません。「動画はおまけだから、時間だけ合算する」といった扱いは避け、提供する研修機関と実施方法・提出書類を確認してください。(出典:リスキリング支給要領「0303 リ」「0510」)
受講記録は、研修開始前に出力できるか確認する
受講後に助成金用の記録を作り直すのではなく、実際の受講と同時に必要な情報が残る仕組みを準備します。特にeラーニングでは、修了証だけで足りるとは限りません。
ライブ・eラーニング・定額制で、証拠書類を分ける
今回扱う申請区分で確認する主な記録は、次のとおりです。実際の提出書類はコースと実施方法の欄を確認してください。
| 実施方法 | 主に準備する記録・資料 |
|---|---|
| 同時双方向型のライブ研修 | 受講者ごとの実施日・出席・受講時間、OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)など。賃金助成では賃金台帳・出勤簿等も確認 |
| 個別講座のeラーニング | 実施結果報告書(様式第8-3号)、修了証等、受講者ごとのLMS情報。修了日・開始終了日時・受講時間数・進捗率など |
| 人への投資促進コースの定額制訓練 | 定額制訓練の実施結果報告書(様式第8-5号)など。各対象者が修了した講座と標準学習時間を確認できる、教育訓練機関発行の資料 |
定額制訓練の様式第8-5号は、支給対象者が10人未満なら全員分、10人以上なら任意の10人分を提出する扱いです。ただし、助成対象となる各受講者の修了・時間要件の確認が不要になるわけではありません。
申請書類の詳細は、人材育成支援コース詳細版「支給申請時に必要な申請書類」、リスキリング支援コース詳細版「支給申請時に必要な書類」、人への投資促進コース支給要領「定額制訓練の支給申請」で確認できます。
LMSの保存期間と、受講者本人が書く報告を確認する
研修機関には、契約前に受講履歴の出力見本を見せてもらいましょう。受講者名とアカウントが対応しているか、必要な日時・進捗が出るか、契約終了後も証拠を保存できるかを確認します。画面を見られるだけでなく、申請に使える資料として残せることが重要です。
2026年8月版の様式第8-3号には、受講者本人が訓練内容や学んだこと等を作成し、自筆で署名する欄があります。担当者や研修機関が実態のない報告をまとめて作るのではなく、本人の受講内容に基づいて記載してください。(出典:eラーニング訓練実施結果報告書・様式第8-3号(R8.8))
8月3日改定は、回数制限と新様式の適用を分けて見る
同じ改定に関連する変更でも、計画届の日付で判断するものと、支給申請の日付も確認するものがあります。「今年度の研修だから同じ書式・同じ回数」とは限りません。
リスキリングのeラーニングは、年度1回の制限を確認する
事業展開等リスキリング支援コースでは、同じ労働者が助成を受ける訓練は1年度3回までです。そのうち、2026年8月3日以降に提出した計画に基づくeラーニング訓練は、複数の実施方法を組み合わせる場合も含め、同じ労働者につき1年度1回までとなります。
ここでの年度は、支給申請日を基準とする4月1日から翌年3月31日までです。8月2日以前に教育訓練機関との契約・申込みを行った場合など、経過措置により新しい1回制限の回数に算入しない取扱いもあります。(出典:リスキリング支給要領「0510 ヘ」「1402」)
この1回制限を、人材開発支援助成金の全コース共通の上限として説明してはいけません。定額制訓練には、対象となる定額制サービスを両コース横断で数え、1人1年度3回までとする別の制限もあります。どの申請メニューに該当するかと、過去の申請をセットで確認してください。(出典:人への投資促進コース詳細版「受講者1人当たりの受講回数の制限」)
旧計画でも、支給申請には新しい様式第8-3号が必要になる
厚生労働省は、人材育成支援・人への投資促進・事業展開等リスキリング支援の3コースについて、新しいeラーニング訓練実施結果報告書の使用を案内しています。
対象は、2025年4月1日以降に提出した計画に基づき、2026年8月3日以降に支給申請を行う場合です。「計画を出したときに使った書式だから、そのままでよい」とは限りません。電子申請画面に旧様式が残る場合も、公式サイトの最新様式を確認してください。(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」の新様式に関するお知らせ)
実務上の注意
オンライン研修では、受講場所の自由さと、助成金の要件を混同しないことが大切です。
見落とされがちな条件:民間のeラーニングは公開募集の状況も確認する
人材育成訓練やリスキリングの事業外eラーニングでは、民間の教育訓練機関が計画届提出時点で、自社ホームページに講座概要・連絡先・申込等の案内を掲載していることなどが必要です。
特定の事業主だけへの提供を目的とする講座は対象外です。「自社専用に作る研修だから、外部業者へ払えば対象」とは判断できません。(出典:人材育成支援コース詳細版「事業外訓練」、リスキリング支給要領「0303 ニ」「0305」)
間違えやすい用語・種別:欠席後の録画視聴は、ライブ出席とは違う
ライブ研修を欠席し、後日録画で学習しても、その時間をそのまま同時双方向型の出席時間へ置き換えることはできません。eラーニングとして扱うなら、進捗管理・修了・計画変更など、別の条件を確認する必要があります。
欠席時の振替方法は受講前に決め、予定と違う形式になった場合は、実施前に研修機関・管轄労働局へ確認してください。(出典:人材育成支援コース詳細版「訓練の実施方法」、リスキリング支給要領「0303 リ」「0700」)
誤解しやすい前提:賃金助成がなくても、無給で受講させてよいわけではない
今回扱う、企業が業務として受講させる訓練では、eラーニングであっても労働時間中の実施と適切な賃金支払いを確認します。「賃金助成の対象外」と「賃金を支払わなくてよい」は別です。
業務として必要な研修を、申請上だけ自主学習や休日の無給受講にしないでください。本人が自発的に受講する訓練は、別の助成メニューの対象となる場合があり、今回の説明とは区別します。(出典:様式第8-3号の労働時間・賃金に関する確認欄、人への投資促進コース詳細版「定額制訓練」「自発的職業能力開発訓練」)
まとめ
オンラインAI研修は、学び方、契約する料金形態、申請コース、残せる受講記録の4点で確認します。ライブか録画かだけで、助成の扱いがすべて決まるわけではありません。
研修を選ぶ段階で、受講履歴の見本、修了条件、本人が作成する報告書、欠席時の対応を確認しておきましょう。2026年9月7日時点で令和8年度の申請案内は公開されていますが、個別の提出期限や適用様式は、厚生労働省の最新案内で再確認してください。制度全体の前提は、人材開発支援助成金とAI研修の基本で補えます。
よくある質問
Zoomなどを使えば、同時双方向型の研修になりますか?
アプリ名だけでは決まりません。受講中に講師と同時に質疑応答できるなど、研修の実態が同時双方向型の定義を満たす必要があります。
eラーニングは修了証だけあれば申請できますか?
今回扱う個別講座では、修了証等に加え、実施結果報告書やLMS情報なども必要です。受講者ごとの学習日時・時間・進捗・修了を確認できるか、事前に確認してください。
定額のライブ研修なら賃金助成も受けられますか?
人への投資促進コースの定額制訓練では、ライブ形式であっても賃金助成は対象外です。受講形式と、申請する訓練メニューを分けて判断します。
「eラーニングは年度1回まで」は、すべての助成金に共通ですか?
いいえ。本文で扱う年度1回の制限は、事業展開等リスキリング支援コースの2026年8月3日以降の計画に基づくeラーニング訓練に関するものです。経過措置や他のコースの上限は別に確認します。
関連する用語・出典
- 同時双方向型の通信訓練:講師と受講者が同時にやり取りできる遠隔講習です。
- eラーニング:LMS等で進捗管理を行う遠隔講習で、同時双方向型とは区別されます。
- LMS:受講者の学習日時・進捗・修了などを管理するシステムです。
- 標準学習時間:講座に設定された学習時間です。個人が実際に視聴した時間とは区別します。
- 定額制訓練:同じ料金で複数の訓練を受けられるサービスを利用する訓練メニューです。
- 確認した公式資料:令和8年8月3日版の各コースの詳細版パンフレット・支給要領、令和8年8月版の様式第8-3号です。
※本記事は2026年9月7日時点の公式情報をもとにした一般的な制度解説です。すべての助成金・訓練メニューに共通する要件ではなく、個別の支給対象や受給を保証するものでもありません。申し込み・受講開始前に最新の支給要領・様式・経過措置を確認し、個別判断は管轄労働局や社会保険労務士へ相談してください。
この記事について
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