補助金の相談は、国が設置した窓口を使えば無料で受けられます。ただし「無料で相談できること」と「相談しても答えが返らないこと」の線引きを知らないと、窓口をたらい回しにされます。
補助金を使いたいと考えたとき、多くの事業者が最初につまずくのが「誰に聞けばいいのか」です。制度の数が多く、申請の手順も細かいため、公募要領を自力で読み解くには時間がかかります。かといって民間のコンサルタントに依頼すれば費用が発生します。
実際には、国と地域が設けた公的な相談窓口が複数あり、その多くは無料で使えます。この記事では、補助金の相談に使える公的窓口を整理し、どの窓口に何を聞けばよいかを、公式情報に基づいて区分します。窓口ごとに答えられる範囲が違うため、そこを外さないことが遠回りを避ける近道になります。
この記事でわかること(結論)
- 無料で使える公的窓口:よろず支援拠点と商工会議所・商工会は、原則無料で経営相談に対応している
- 窓口ごとの役割の違い:経営の方向づけは公的窓口、制度固有の手続きは各補助金の事務局が担当する
- 無料とは限らない相談先:認定経営革新等支援機関は国の認定制度であり、支援が有料になる場合がある
- 使えなくなった制度:無料の専門家派遣として紹介されてきた「中小企業119」は、令和6年3月末で終了している
- 相談前の準備:何にいくら使いたいかを言葉にしてから相談すると、窓口の助言が具体的になる
補助金の相談窓口は「公的な無料窓口」と「有料になりうる専門家」に分かれる

補助金の相談先は、大きく2つに分かれます。国や地域が設置した公的窓口は原則無料で相談でき、税理士や中小企業診断士などの専門家に個別に依頼する場合は費用が発生することがあります。まず無料の公的窓口から始めるのが、費用面でも情報の中立性でも安全な順序になります。
もう一つ押さえておきたいのが、公的窓口と補助金事務局の役割分担です。公的窓口は「自社にどの制度が合うか」「事業計画をどう組み立てるか」といった経営の相談に対応します。一方で「この経費は対象になるか」「申請画面のこの項目はどう入力するか」といった制度固有の質問は、各補助金の事務局が答える領域です。東京商工会議所も、補助金の申請方法や要件については補助金事務局に問い合わせるよう案内しています(出典:東京商工会議所「無料経営相談の特徴」)。
何度でも無料で相談できる「よろず支援拠点」
よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所です。47都道府県すべてに設置され、経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応しています(出典:中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点全国本部」)。補助金の相談先として最初に検討する価値がある窓口です。
相談できる対象は幅広く設定されています。中小企業・小規模事業者に加えて、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人など中小企業・小規模事業者に類する立場の方、これから創業を予定している方も対象に含まれます(出典:中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点全国本部」)。法人を設立する前の段階でも相談できる点が、よろず支援拠点の特徴です。
よろず支援拠点は、商工会や商工会議所などの支援機関と連携するワンストップ窓口として運営されています。相談内容が拠点の専門外であっても、適切な機関につなぐ役割を担っています。なお2026年4月1日からは、全国のよろず支援拠点内に生産性向上支援センターが新たに開設されています(出典:中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点全国本部」)。
相談は電話・メールなどで予約を受け付けており、拠点によって対面とオンラインを選べます。窓口の一覧は、よろず支援拠点全国本部のサイトから確認できます。
地域の窓口として使える「商工会議所・商工会」
商工会議所・商工会は、地域に根ざした経営相談の窓口です。対象となる地域で事業を営んでいるか、その地域で創業を予定している方であれば、法人・個人を問わず原則無料で利用できます(出典:日本商工会議所「経営相談」)。会員でなくても相談を受け付けている商工会議所が多くあります。
商工会議所・商工会には経営指導員が配置されており、経営に関する助言や情報提供を行っています。相談内容に応じて、弁護士・税理士・中小企業診断士などの専門相談員につなぐ体制を持つ商工会議所もあります。
補助金との関係で商工会議所・商工会が特に重要になるのが、小規模事業者持続化補助金です。小規模事業者持続化補助金では、商工会議所・商工会が発行する事業支援計画書が申請に必要になります。制度によっては、相談先というだけでなく申請の必須経路になる点を押さえておく必要があります。
制度固有の手続きは各補助金の事務局に聞く
「この経費が対象になるか」「申請画面のこの項目をどう入力するか」といった制度固有の質問は、各補助金の事務局が答える領域です。公的な経営相談窓口では制度の細部まで断定できないため、手続きの疑問は事務局に直接確認するのが確実です。
デジタル化・AI導入補助金2026を例にすると、事務局コールセンターが設置されており、受付時間は9時30分から17時30分(土曜・日曜・祝日、および年末年始を除く)です(出典:デジタル化・AI導入補助金2026「お問い合わせ・相談窓口」)。各募集回の締切前日と当日は電話が混み合うと事務局が案内しているため、締切直前の問い合わせは避けたほうが安全です(出典:デジタル化・AI導入補助金2026「お問い合わせ・相談窓口」)。
問い合わせの際は、IT導入支援事業者名・法人番号、補助事業者名・法人番号、交付申請番号、ITツール番号・ITツール名を聞かれる場合があります(出典:デジタル化・AI導入補助金2026「お問い合わせ・相談窓口」)。手元に資料を用意してから電話をかけると、やり取りが一度で済みます。デジタル化・AI導入補助金2026の制度の枠組みはデジタル化・AI導入補助金2026とは?使える制度の種類と選び方で整理しています。
認定経営革新等支援機関は「無料」とは限らない
認定経営革新等支援機関は国が認定した支援機関ですが、支援が無料であることを意味しません。関東経済産業局は、認定支援機関による支援は有料の場合があると明示し、国が認定しているのは支援能力であって料金体系ではないと注意を促しています(出典:関東経済産業局「経営革新等支援機関について」)。
認定経営革新等支援機関には、税理士・税理士法人・公認会計士・中小企業診断士・商工会や商工会議所・金融機関などが含まれます。同じ認定を受けていても、商工会議所のように無料で相談できる機関と、民間の専門家として費用が発生する機関が混在しています。認定の有無だけで無料かどうかは判断できません。
新事業進出補助金やものづくり補助金など、認定支援機関の確認書が申請に必要な制度もあります。依頼する場合は、支援の範囲と費用を契約前に書面で確認してください。認定経営革新等支援機関は、中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムで探せます(出典:中小企業庁「認定経営革新等支援機関」)。
相談内容別に、どの窓口を選ぶか

相談内容によって、適した窓口は変わります。経営の方向づけはよろず支援拠点と商工会議所・商工会、制度の手続きは各補助金の事務局、事業計画の作り込みは認定経営革新等支援機関、という区分が基本になります。
| 相談したいこと | 適した窓口 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 自社が使えそうな制度を知りたい | よろず支援拠点/商工会議所・商工会 | 原則無料 |
| 経営課題そのものを整理したい | よろず支援拠点 | 無料(何度でも) |
| 地域独自の制度を知りたい | 商工会議所・商工会 | 原則無料 |
| 対象経費・申請画面の操作を確認したい | 該当する補助金の事務局 | 無料(通話料は負担) |
| 小規模事業者持続化補助金に申請したい | 商工会議所・商工会(事業支援計画書の発行元) | 原則無料 |
| 事業計画書を作り込みたい | 認定経営革新等支援機関 | 機関により有料 |
相談の前に、何にいくら使いたいのかを言葉にしておくと、窓口からの助言が具体的になります。相談前の自社整理の手順は補助金は使えるか?申請前に自社で確認する5つの手順にまとめています。
実務上の注意
公的な相談窓口を使うときに、特につまずきやすいポイントを3点挙げます。
商工会議所・商工会は管轄地域が決まっている
商工会議所・商工会の経営相談は、対象となる地域で事業を営むか、その地域で創業を予定している事業者が対象です(出典:日本商工会議所「経営相談」)。事業所の所在地によって相談先の商工会議所が決まるため、任意の商工会議所を選んで相談することはできません。東京商工会議所の場合、無料経営相談の対象は東京23区内に事業所がある事業者、または東京23区内で創業予定の方に限られています(出典:東京商工会議所「無料経営相談の特徴」)。まず自社の所在地を管轄する商工会議所・商工会を調べるところから始めてください。
「認定支援機関」は国が料金を認めた制度ではない
認定経営革新等支援機関という名称から、国が費用面まで保証していると受け取られることがあります。関東経済産業局は、国が認定しているのは支援能力であって料金体系ではないと明示しています(出典:関東経済産業局「経営革新等支援機関について」)。認定支援機関のなかには商工会議所のように無料で相談できる機関もあれば、民間の専門家として報酬が発生する機関もあります。「国の認定を受けているから安心して任せられる」という判断は避け、支援範囲と費用を契約前に確認してください。
無料の専門家派遣「中小企業119」はすでに終了している
無料で専門家を派遣する制度として「中小企業119」を紹介する記事が残っていますが、中小企業119の専門家派遣事業は令和6年3月31日をもって終了しています。専門家の派遣最終日は令和6年2月29日でした(出典:中小企業119 公式サイト「事業終了のお知らせ」、2024年1月31日)。現時点で無料の専門家派遣を前提に計画を組むことはできません。公的な無料相談を使う場合は、よろず支援拠点または商工会議所・商工会を起点にしてください。終了した制度の情報が検索結果に残り続ける点は、補助金分野で特に起こりやすい問題です。情報の見極め方は補助金情報はどこで確認する?公式情報の調べ方と怪しい情報の見分け方で整理しています。
まとめ

補助金の相談は、よろず支援拠点と商工会議所・商工会という2つの無料窓口から始めるのが基本です。制度固有の手続きは各補助金の事務局、事業計画の作り込みは認定経営革新等支援機関と、聞く相手を分けることで答えの精度が上がります。認定支援機関は有料の場合があり、無料の専門家派遣だった中小企業119は終了しているため、費用が発生するかどうかは相談前に必ず確認してください。
よくある質問
補助金の相談は本当に無料でできますか?
よろず支援拠点は何度でも無料、商工会議所・商工会は対象地域の事業者であれば原則無料で相談できます。一方、認定経営革新等支援機関のうち民間の税理士や中小企業診断士に個別依頼する場合は、費用が発生することがあります。
よろず支援拠点と商工会議所は、どちらに相談すればいいですか?
経営課題そのものを整理したい段階ならよろず支援拠点、地域独自の制度や小規模事業者持続化補助金の相談なら商工会議所・商工会が向いています。どちらも無料なので、両方に相談して助言を比べる進め方も可能です。
会員でなくても商工会議所に相談できますか?
会員以外でも相談を受け付けている商工会議所が多くあります。ただし対象は管轄地域の事業者に限られるため、自社の所在地を管轄する商工会議所・商工会に問い合わせてください。
相談に行く前に、何を準備すればいいですか?
何にいくら使いたいのかを言葉にしておくと、助言が具体的になります。導入したい設備やツールの見当、おおよその金額、実施したい時期の3点をメモしておくと、初回の相談で話が進みます。
補助金の申請書類を代わりに作ってもらうことはできますか?
公的な無料相談窓口は助言や情報提供が対象で、書類作成の代行は原則として対象外です。補助金の申請書作成・提出の代行は行政書士、厚生労働省の助成金の申請代行は社会保険労務士の業務とされているため、依頼先を誤らないよう注意してください。
関連する用語・出典
- よろず支援拠点:国が全国47都道府県に設置した無料の経営相談所。中小企業基盤整備機構が全国本部を務める(よろず支援拠点全国本部)
- 経営指導員:商工会議所・商工会に配置され、小規模事業者を中心に経営に関する助言や情報提供を行う担当者
- 認定経営革新等支援機関:中小企業等経営強化法に基づき国が認定した支援機関。税理士・公認会計士・中小企業診断士・商工会議所・金融機関などが該当する(中小企業庁)
- 事業支援計画書:小規模事業者持続化補助金の申請に必要な書類。商工会議所・商工会が発行する
- 中小企業119:中小企業庁の専門家派遣事業。令和6年3月31日をもって終了(中小企業119 公式サイト)
- 生産性向上支援センター:2026年4月1日から全国のよろず支援拠点内に開設された支援窓口(よろず支援拠点全国本部)
- デジタル化・AI導入補助金2026 事務局コールセンター:制度固有の手続きに関する問い合わせ窓口(デジタル化・AI導入補助金2026)
※本記事は2026年7月29日時点で公開されている公式情報をもとに作成しています。相談窓口の受付時間・対象範囲・費用の扱いは変更される場合があります。実際に相談する際は、各窓口の公式サイトで最新情報を確認してください。本記事は特定の申請結果を保証するものではありません。
この記事について
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