「自社は補助金を使えるのか」は、いきなり専門家に聞く前に、ある程度まで自分で整理できます。目的・自社の規模・タイミング・制度の当たり・相談先の5つを順に確認しておくと、相談がぐっとスムーズになります。
補助金を使ってみたいけれど、自社が対象なのか、いつ動けばいいのかがはっきりせず、止まっている方は少なくありません。準備が整わないまま相談しても、話がかみ合わず時間だけがかかります。この記事では、専門家に相談する前に自社で確認しておきたいことを、5つの手順に整理します。制度そのものの細かい解説ではなく、「使える可能性の当たりをつけ、相談の準備を整える」ための手順です。
この記事でわかること(結論)
- 整理の全体像:補助金を使えるかは「目的」「自社の規模」「タイミング」「制度の当たり」「相談先」の5つを順に確認すると整理できる
- 最初にやること:制度を探す前に、何にお金を使いたいか(研修か・ツール導入か・設備か)を言葉にする
- 対象の判断軸:中小企業・小規模事業者かどうかは、業種ごとの資本金・従業員数で決まる。誰でも対象ではない
- 相談前の到達点:自社の目的と規模、動ける時期を整理できていれば、相談先での話が具体的に進む
STEP1:何にお金を使いたいかを言葉にする
最初にやるべきは、制度を探すことではなく、「何のために・何にお金を使いたいか」を言葉にすることです。使い道が定まると、探すべき制度の方向が自然に絞られます。
補助金や助成金は、使い道によって管轄も制度も変わります。社員にAIを学ばせたい(研修)のか、業務にAIツールを入れたい(導入)のか、機械や設備を新しくしたい(設備投資)のかで、見るべき制度が分かれます。ここが曖昧なまま制度名だけを追いかけると、自社に合わない制度を調べ続けることになりがちです。
まずは「誰の・どの業務を・どう変えたいか」を一文で書き出してみてください。AI活用の文脈で、研修と導入のどちらで考えるべきか迷う場合は、切り分けの考え方をAI研修とAIツール導入で違う補助金・助成金の選び方で整理しています。
STEP2:自社が対象の規模・区分かを確認する
次に確認したいのが、自社が補助金の対象になる規模・区分かどうかです。多くの補助金は中小企業・小規模事業者が対象で、「中小企業なら誰でも」ではなく、業種ごとに決められた基準で判断されます。
中小企業の範囲は、業種ごとに「資本金の額」と「常時使用する従業員の数」で定められています。製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5千万円以下または従業員50人以下、サービス業は資本金5千万円以下または従業員100人以下が目安です。資本金と従業員数は、どちらか一方を満たせば中小企業に当たると判断されます(出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」)。
見落とされやすいのが、規模の基準を満たしても対象外になる場合があることです。多くの補助金では、大企業と密接な関係を持つ「みなし大企業」が対象から外れます(出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」)。制度によっては独自の基準を設けているため、最終的には各制度の公募要領で確認してください。
あわせて押さえておきたいのが、対象になるかどうかを決めるのは規模・区分であり、決算が赤字か黒字かではないという点です。多くの補助金の申請要件に、黒字であることは含まれていません。赤字を理由に検討をやめてしまう前に、補助金は赤字でも申請できる?財務状況と審査の関係で財務状況が審査でどう扱われるかを確認してください。

STEP3:タイミングが合うかを確認する
補助金は、いつでも申請できるわけではありません。多くの制度は募集期間(公募)が決まっており、動く時期を間違えると、そもそも申請できなかったり、対象経費にならなかったりします。
たとえばデジタル化・AI導入補助金2026は、締切がおおむね1〜2か月に1回のペースで設定され、公表されている締切ごとに区切られています(出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト「デジタル化・AI導入補助金2026」)。予算の上限に達した枠から早めに締め切られることもあるため、「導入したいものが決まったら早めに動く」のが基本です。
タイミングで最も間違えやすいのが「発注の順番」です。多くの補助金では、交付決定を受ける前に発注・契約・支払いをすると、その経費が対象外になります。「良さそうなツールが見つかったから先に契約した」が、そのまま失敗につながります。申請前に確認すべき準備をまとめた補助金申請前チェックリスト。初心者が確認すべき5ステップもあわせて確認しておくと、順番の間違いを防げます。
STEP4:使えそうな制度の当たりをつける
目的・規模・タイミングが整理できたら、制度を探す段階です。ここでのコツは、いきなり細部に踏み込まず、「自社の目的に近い制度はどれか」の当たりをつけることです。
制度を探すときは、必ず公式の情報にあたってください。まとめサイトの情報は古かったり、条件が省かれていたりします。公式情報の探し方や、怪しい情報の見分け方は補助金情報はどこで確認する?公式情報の調べ方と怪しい情報の見分け方で整理しています。
AIツールの導入を考えている場合、当たりをつける具体例のひとつがデジタル化・AI導入補助金2026です。制度の種類や選び方はデジタル化・AI導入補助金2026とは?使える制度の種類と選び方にまとめています。この段階では見当がつけば十分で、細かい要件は次の相談の場で進めれば構いません。

STEP5:相談先を決めて相談する
ここまで整理できたら、相談に進みます。自社の目的・規模・動ける時期がまとまっていれば、相談先での話が具体的に進み、制度選びや申請準備が一気にはかどります。
相談先には選択肢があります。地元の商工会議所・商工会では、経営指導員が補助金の基本的な相談を受け付けています。事業計画の作成支援や制度選定のアドバイスは、認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士など)に相談できます(出典:中小企業庁「ミラサポplus 補助金・助成金 補助金入門」)。
注意したいのは、依頼できる範囲が資格によって分かれていることです。補助金の申請書作成・提出の代行は行政書士の業務、厚生労働省の助成金の申請代行は社会保険労務士の業務とされています。依頼先を間違えないようにしてください。あわせて、申請支援だけで高額な成功報酬を請求し、採択後のサポートをしない業者への注意も、中小企業庁が呼びかけています(出典:中小企業庁「ミラサポplus 補助金・助成金 補助金入門」)。
実務上の注意
手順を確認するだけでなく、相談前の段階でつまずきやすいポイントを3点挙げます。
補助金は原則「後払い」で、事業実施中は立て替えが必要
補助金は、事業を実施して実績を報告したあとに支払われる「後払い(精算払い)」が原則です。そのため、事業を進めている間は、かかった費用をいったん全額自社で立て替える必要があります。「採択されたらすぐお金が入る」と考えて資金計画を組むと、資金繰りに行き詰まることがあります。補助金が入るまでの立て替え分を、あらかじめ手当てしておくことが大切です。
「補助金」と「助成金」は別物。目的を取り違えると相談先も変わる
補助金(経済産業省・中小企業庁系が中心)と助成金(厚生労働省系が中心)は、管轄も財源も申請の仕組みも異なります。研修に使いたいのか、ツール導入に使いたいのかで、見るべき制度も相談先も変わります。取り違えると、相談先で「それはうちの管轄ではない」となってしまいます。両者の違いは助成金と補助金の違いとは?管轄・財源・目的でわかる見分け方で整理しています。
「中小企業なら誰でも対象」ではない
中小企業向けの制度でも、業種ごとの資本金・従業員数の基準を満たす必要があり、さらに「みなし大企業」は対象外になることがあります。「中小企業だから当然使えるはず」と思い込んで準備を進めると、対象外だと後から判明することがあります。自社が基準を満たすかは、制度ごとの公募要領で早めに確認してください。
まとめ

「自社は補助金を使えるのか」は、目的の整理・自社の規模の確認・タイミングの確認・制度の当たり付け・相談先の決定、という5つの手順で整理できます。制度の細部から入るのではなく、まず自社の状況を言葉にすることが、遠回りに見えていちばんの近道です。ここまで整理できていれば、相談の場で話が具体的に進みます。最新かつ正確な要件は、各制度の公式サイト・公募要領や、商工会議所・専門家の窓口で確認してから進めてください。
使えそうだと見当がついたら、次は申請の準備です。申請で必要になる書類の種類や取得先は、補助金申請の必要書類とは?決算書・登記簿・納税証明を準備で確認できます。
よくある質問
補助金は申請すれば必ずもらえますか?
制度によります。審査を経て採択される「補助金」は、申請しても採択されないことがあります。一方、要件を満たせば受給できるタイプの制度もあります。いずれにしても「必ずもらえる」前提で資金計画を組まず、補助が出なくても事業が続けられる計画にしておくことが大切です。
どこに相談すればよいですか?
地元の商工会議所・商工会で基本的な相談ができます。事業計画の作成支援は認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士など)が対応します。申請書の作成・提出の代行は、補助金は行政書士、厚生労働省の助成金は社会保険労務士の業務です。依頼内容によって相談先が変わります。
補助金と助成金、どちらを調べればよいですか?
お金の使い道で変わります。研修に使いたいなら厚生労働省系の助成金、ツール導入や設備投資に使いたいなら経済産業省・中小企業庁系の補助金が候補になりやすいです。まず目的を決めてから、対応する制度を調べると効率的です。
準備はいつから始めればよいですか?
公募が始まってから動くと間に合わないことが多いため、使いたい制度の見当がついた時点で準備を始めるのが安全です。締切から逆算し、余裕を持って相談・書類準備を進めてください。具体的な締切は各制度の公式サイトで確認してください。
個人事業主でも補助金は使えますか?
制度によっては個人事業主も対象です。ただし、業種ごとの要件など制度固有の条件があるため、申請したい制度の公募要領で対象範囲を確認する必要があります。
関連する用語・出典
- 中小企業・小規模事業者:業種ごとに資本金・従業員数で範囲が定められた事業者。多くの補助金の対象。資本金・従業員数はどちらか一方を満たせば中小企業と判断される(中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」)
- みなし大企業:大企業と密接な関係を持つとして、多くの補助金で対象から外れることがある企業。規模の基準を満たしても対象外になる場合がある
- 交付決定:補助金の審査を通過し、正式に交付が決まった状態。交付決定より前に発注・契約・支払いをすると、その経費は対象外になることが多い
- 公募要領:各制度の対象者・対象経費・申請方法・締切などをまとめた公式文書。制度ごとに更新されるため、最新版で確認する
- 認定経営革新等支援機関(認定支援機関):国が認定した経営支援の専門機関。税理士・中小企業診断士・金融機関などが該当し、事業計画の作成支援を行う(ミラサポplus「補助金入門」)
※本記事の制度情報は2026年7月時点の一般的な整理です。各補助金・助成金制度は改正があり、対象・補助率・上限額・対象経費・募集時期などは変更される場合があります。最新かつ正確な内容は、各制度の公式サイト・公募要領・管轄窓口、または専門家(行政書士・社会保険労務士・中小企業診断士等)でご確認ください。
この記事について
AXメディアは、株式会社ジーズ AX事業部が運営しています。AX事業部では、AI研修・AIエージェント開発とあわせて、補助金・助成金の活用支援を提供しています。本記事は、公募要領・公式サイトなどの一次情報をもとに、AI導入を検討する中小企業の視点で整理しています。

