成果物がきれいになっても、本人の判断まで見えるとは限りません。
部下から届く提案書や報告書の完成度は上がった。でも、どの部分を本人が考え、どこをAIに任せたのかがわからない。AIの導入は、作る側だけでなく評価する側の仕事も変えています。
monday.comは2026年10月21日、Nielsenに委託した調査「Squinting in the Sun」を公表し、公式Xでも貢献と責任の見えにくさを問いかけました。回答者の53%が、従業員本人の貢献を評価しにくくなったと答えています。
ただし、これは日本の全企業の現状を示す数字ではありません。調査の対象と時点を押さえたうえで、職場で何を確認するべきかを考えます。
この記事でわかること
- 調査の要点:AI利用後に、本人の貢献の評価やレビュー負担が変わっています。
- 数字の読み方:2026年4月に、海外7カ国の大企業の管理職を対象に実施した調査です。
- 仕事への示唆:完成品だけでなく、判断理由・検証・修正の担当を確認する視点を整理します。
53%が評価しにくいと回答。AIへの不満とは別の問題
公式の調査解説では、53%が本人の貢献の評価を難しく感じ、47%がチームの成果物の確認や指導に以前より時間を使い、78%が評価方法を変えたとしています。AIを使えば、管理職の仕事も自動的に減るとは限らないという結果です。
これは「AIを使った成果物は価値が低い」という意味ではありません。質の高い成果を出すことと、その成果に本人がどう貢献したかを評価することは、違う問いだからです。
作業時間が短くても、判断の価値は残る
たとえば、AIが提案書の文章を整えたとしても、顧客の事情に合う案を選ぶ、根拠の弱い数字を外す、無理な約束をしないよう修正する仕事は残ります。逆に、長い時間をかけていても、重要な前提を確認していなければ成果の信頼性は上がりません。
AIの使用量や文章の上手さだけを、本人の能力の代わりに採点しないことが重要です。調査は管理職の認識を集めたもので、特定の評価制度の有効性を実験で証明したものではありません。
完成品と一緒に、何を確認するとよい?
以下は調査が示した課題を踏まえた、確認項目の例です。調査票の転載でも、monday.comが定める評価基準でもありません。職種や成果の性質に応じて調整してください。
| 確認するもの | 本人に説明してもらうこと | 見たい貢献 |
|---|---|---|
| 目的と前提 | 誰のどの課題を解くために、この形にしたか | 課題を定める力 |
| 選択理由 | 複数の案から、なぜこの案を選んだか | 判断と優先順位 |
| 根拠の確認 | どの情報源や数値を確認し、何が未確認か | 検証と限界の理解 |
| 修正内容 | AIの出力から、どこを直したか | 品質への責任 |

毎回すべての会話履歴を提出させる必要はない
確認を増やすほど、本人と管理職の負担も増えます。まずは重要な提案や外部に出す資料など、判断の影響が大きい成果物を対象に、短い補足を添える運用を試す方法があります。
たとえば「AIに任せたのは構成案の作成。採用案は納期を優先して選択。費用は見積書で照合。競合比較は未確認」と書けば、読み手は確認先を絞れます。これは架空の記載例で、実際の調査参加者の発言ではありません。
レビューの時間も、仕事として見えるようにする
作成者が短時間で仕上げても、その後の確認や差し戻しが増えれば、チーム全体では負担が移っただけかもしれません。管理職が何を直したかも残すと、本人の育成に必要な点を具体化できます。
「AIを使ったか」より、説明できるかを確かめる
会議で前提が変わったときに、提案をどう直すか説明してもらう方法もあります。成果物の文体からAI利用を推測するのではなく、本人が判断と根拠を説明できるかを対話で確認する考え方です。
一方、管理職自身もAIに評価文を整えさせる場合があります。文章の作成補助と、本人の実績を判断する責任は分ける必要があります。確認できる実績と、本人への説明の機会を省いた評価に置き換えないことが大切です。
調査の対象と、数字を当てはめられない範囲
会社が配信した調査発表によると、実施時期は2026年4月。従業員500人以上の企業に所属するディレクター・上級管理職1,701人が回答しました。対象は米国、英国、オーストラリア、ドイツ、フランス、ブラジル、シンガポールの7カ国で、日本は含みません。
公表は10月21日ですが、10月時点の製品や働き方をそのまま測った調査ではありません。また、回答者の認識であり、実際の作業時間を全件計測した結果でもありません。小規模企業や日本の職場に同じ割合が当てはまるとは言えません。
monday.comは業務管理製品を提供する会社で、この調査を委託しています。調査結果と、同社製品の導入を勧める説明は分けて読みましょう。ここで紹介した課題は、特定製品を購入すれば解消するという証拠ではありません。
働く側からAI活用の成果を周囲へ伝える考え方は、職場でAI活用を共有するための解説で扱っています。本記事の調査結果や、管理職が貢献を確認する視点とは分けてご覧ください。
実務上の注意
評価の基準を変える場合は、本人に事前に伝え、職種や利用できるAI環境の違いも考慮してください。機密情報を含む会話履歴の無制限な提出や、文体だけによるAI使用の決めつけは避けます。
まとめ
今回の調査が示すのは、AIの性能だけでなく、成果に対する人の貢献をどう確認するかという管理上の課題です。完成品の見栄えに加えて、目的、選択、検証、修正を説明できるようにすると、評価と育成の話を具体的にしやすくなります。
よくある質問
53%は日本の管理職の数字ですか?
いいえ。日本を含まない7カ国で、従業員500人以上の企業の管理職を対象にした調査です。
調査は2026年10月に実施されたのですか?
発表は10月21日ですが、調査の実施は2026年4月です。
AIを使った人の評価を下げるべきですか?
この調査はそのような結論を示していません。AIの使用有無だけでなく、成果、判断、検証など、事前に共有した仕事の基準で確認することが重要です。
出典・参考情報
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